栖来ひかりが綴る「日本人に伝えたい台湾のリアル」

2018年6月18日

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栖来ひかり (すみき・ひかり)

台湾在住ライター

京都市立芸術大学美術学部卒。2006年より台湾在住。日本の各媒体に台湾事情を寄稿している。著書に『在台灣尋找Y字路/台湾、Y字路さがし』(2017年、玉山社)、『山口,西京都的古城之美』(2018年、幸福文化)がある。 個人ブログ:『台北歳時記~taipei story』

 「猫の手でも借りたい」という言葉がある。

 そして、実際に猫の手を借りた『きょうの猫村さん』(ほしよりこ/マガジンハウス)という漫画がある。家事全般に長けたネコの「猫村ねこ」さんが、とある富裕で事情持ちな家庭に家政婦として派遣される話だ。この猫村さん、料理もお掃除もパーフェクトなのに、緊張して爪を研いだり毛を舐めたり猫舌だったりと何とも愛くるしい。猫だけに人間の事情にもちょっと疎いので、かえって雇い主にとって気の許せる存在だ。この作品を読んだら誰もが「ああ、猫村さんが家にきてくれたら」と夢想するに違いなく、老若男女を魅了して大ベストセラーとなった。

最近『カーサ・ブルータス』誌で特集された「猫村さん」。作者のほしよりこ氏は、2015年に第19回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した(写真:筆者提供)

 働き手の減少と共に女性の社会進出が叫ばれるなか、仕事・家事・育児の一極集中による女性の負担は「ワンオペ」と揶揄され、少子化の進む日本の社会問題になりつつある。介護分野の人手不足も深刻で、世界中のどこの国よりも早く高齢化社会をむかえた日本はまさに「猫の手でも借りたい」ぐらい切迫した状況といっていい。

 今年になって日本政府は、外国人に対して新たな在留資格を新設することで、移民によって農業や介護現場に対応していく方針を固めた(出入国管理及び難民認定法に関する改正案 参考記事)。これまでの「技能実習」という実質を伴わない制度に比べて日本の移民政策は大きく進歩したといえるが、またこれによって様々な問題も予想される。

台湾のリアルな「お手伝いさん事情」とは

 筆者が暮らしている台湾も、日本を上回るスピードで高齢化が進んでおり、家事や介護の分野でも早くから外国人労働者の手を借りている。台湾政府によると、現在は25万人以上の外国人労働者が家事や介護に携わっているそうで、人口2350万人の台湾ではかなり高い割合だ。不法滞在や偽装結婚など裏のルートもあるので、実際の人数は更に多いだろう。当然ながらトラブルも少なくないが、概してメリットの方が大きいから、これだけ数が増えたといえる。こうした台湾でのお手伝いさん事情を、身近な例から紹介したい。

台湾の介護社会において外国人労働者は欠かすことの出来ない存在。街中や交通機関、公園などあちこちで見かけることが出来る(写真:筆者提供)

 女性の社会進出が進んでいる東アジアの多くの都市で、外国人労働者のお手伝いさんが受け入れられているが、周囲をみる限りでは、住環境が劣悪といわれるシンガポールや香港に比べ、台湾は比較的マシな労働環境ではないかと思われる。実際、自宅介護などで公的な機関に雇い入れを申請する際に、お手伝いさん用の個室があるかどうかもチェックされ、契約の際にも休日や労働時間について話し合われる(そうではないブラックな雇い主も勿論いる)。

 筆者が直接に交流をもった外国人労働者の女性はこれまで15人ほどいるが、その中の多くがインドネシア人女性、続いてフィリピン人女性だった。

近年台湾に働きに来ているのは、東南アジアからのムスリムの人々が多い(写真:筆者提供)

 筆者の以前の職場でお手伝いさん及び高齢者の介護をしていたフィリピン人女性は、大卒で教員免許も持っていると言っていた。フィリピンでは、こうした高学歴の女性でも海外に家事・介護労働で働きに出ている例が多い。英語と中国語を流暢に操り、頭がよくて働きぶりも真面目だったので、相場より高い給与をもらい、故郷が台風による水害で大変だった時も、雇い主である社長が見舞金や飛行機代を出すなど、かなり大事にされていた。

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