海野素央の Love Trumps Hate

2018年7月4日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「トランプ大統領のゲームのやり方」です。ドナルド・トランプ米大統領はホワイトハウス担当記者からの米朝首脳会談に関する質問に対して、「みんなゲームをやっているんだ」と回答しました。確かにトランプ氏には不動産取引のみならず、内政及び外交もゲームなのでしょう。ゲームには勝者と敗者が存在します。同氏は常に勝者にこだわりを持っています。

 では、トランプ大統領はどのようなゲーム戦略を使って相手に対して優位に立とうとしているのでしょうか。本稿では、米朝首脳会談、移民政策及び貿易問題などを取り上げながら、同氏のゲーム戦略を整理してみます。

(Scott Olson/GettyImages)

5つのゲーム戦略

 トランプ大統領はゲームを有利に進め、最終的に勝利を収めるために、主として5つの戦略をとっています。以下でまとめてみましょう(図表1)。

 

ゲーム戦略1 脅しと圧力

 米朝首脳会談実現に至るまでに、トランプ大統領が北朝鮮に対してとった戦略は「脅し」と「圧力」でした。これらは「ハード型交渉」に含まれます。脅しと圧力は、トランプ氏の交渉及び取引において主要な構成要素になっています。

 昨年トランプ大統領は、空母打撃群を朝鮮半島に派遣して、目に見える形で北朝鮮に圧力をかけました。ホワイトハウスの記者団に対して、「北朝鮮は米国に対する挑発を続けるならば、これまでに見たことがない炎と激怒に直面するだろう」と述べて、言葉による脅しもかけました。

 米軍の幹部と配偶者をホワイトハウスに招いたとき、トランプ氏は「嵐の前の静けさ」と語り、ここでも北朝鮮を脅しています。当時、同氏は軍事行動も辞さないというメッセージを北朝鮮に発信していました。恐怖心を使って、北朝鮮の核・ミサイル開発を止めようとしたのでしょう。同時に、北朝鮮に対する原油輸出制限を盛り込んだ追加制裁や外貨獲得源を絶つための独自制裁といった経済制裁も含めて、最大限の圧力をかけていったのです。

ゲーム戦略2 「私のトモダチ」

 トランプ大統領は、交渉相手の意思を弱める目的で「私のトモダチ」作戦を展開しています。「私のトモダチ」と呼ばれた相手は、トランプ氏に対して強い要求ができなくなります。

 例えば、トランプ大統領は安倍晋三首相を「偉大なリーダーである」と持ち上げ、「私のトモダチだ」と繰り返し述べます。中国の習近平国家主席に対しては、「私は彼のことが好きだ。彼も私のことが好きだと思う」と語り、そのうえで「彼は私のトモダチだ」と強調します。同様に、韓国の文在寅大統領にも「彼は寛大だ」と称賛し、「私のトモダチだ」と主張します。

 では、北朝鮮の金正恩労働党委員長に対してはどうでしょうか。米朝首脳会談後、米FOXニュースのインタビューの中でトランプ大統領は、金委員長に関して「彼とは非常にケメストリー(相性)が合う」と4回も述べました。

 中間選挙を控えたトランプ氏は、共和党候補の応援演説を行うたびに、金委員長との相性の良さについて言及します。今後、同氏が金氏を「私のトモダチ」と呼ぶのかに注目です。

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