田部康喜のTV読本

2018年4月27日

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田部康喜 (たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 NHKスペシャル「シリーズ 金正恩の野望」(4月15日、21日、22日)は、史上初めての米朝首脳会談を前にして、金正恩の人物分析、権力の掌握の源泉となっている「39号室」と呼ばれる、外貨獲得機関、そして核・ミサイルは本当に放棄されるのか、世界各地の取材を通じて多角的に分析した。

(iStock/Allexxandar)

 戦争も辞さない独裁者のイメージは、金正恩自身が作り出したもので、その裏には体制を維持する緻密な戦略が透けてみえる。金日成、正日、正恩の三代の独裁体制が維持されている大きな要因として、合法あるいは非合法の手段によって外貨を稼ぐ組織の具体像を明らかにした。さらに、北朝鮮が核開発施設の放棄を声明しながら、核燃料の開発を進めている実態も浮かび上がった。

「正恩の深遠な戦略に世界は巻き込まれていくことだろう」

 第1集「暴君か戦略家か 禁断の実像」は、金正恩の幼少時代とスイス留学時代に遡って、その性格を分析している。母親のコ・ヨンヒは大阪の在日朝鮮人出身である。このことは人民のほとんどが知らされていない。

 正恩は幼少時代から「大将」と呼ばれて、周囲から特別の存在として扱われていた。叔母は次のように証言している。

 「周りの人間が権力者として扱っているので、普通の人間として成長するのは無理だろうと思った」と。

 スイス留学時代は流暢なドイツ語を話していた。当時の担任の教師は証言する。

 「適応能力が高かった。流暢なドイツ語はよほど努力したのだろう。成績についてもそうだった」

 正恩の演説や動静を報じる新聞記事などの言葉を、人工知能で分析した結果は注目に値する。それは、「同盟」という言葉と、正恩独自の「自強力」という言葉である。ふたつのことばは、人口知能の分析によって、使用度が極めて高い。

 公安調査庁において、長年にわたって北朝鮮の分析にかかわった坂井隆は、次のように分析する。

 「人民をなんらかの組織に組み込んでいこうという意思を感じる」

 「自強力」について、明治大学教授(心理学)の海野素央はこういう。

 「上からではなく、ボトムアップを図ることを狙っているのかもしれない」と。

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