前向きに読み解く経済の裏側

2018年7月17日

»著者プロフィール
閉じる

塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 今回は『老後破産しないためのお金の教科書』の著者である塚崎が、株式投資と株式投機の違いについて解説します。株式投資には、短期と長期があります。短期の投資は価格の変化に賭けるもので投機的であり、長期の投資は価値の変化に賭けるもので文字通りの投資である、というのが本項の結論です。

(z_wei/GettyImages)

短期売買は運に賭ける投機の要素が強い

 「今日買って明日売ろう」という短期投資は、株式の価値の変化ではなく、株式の価格の変化に賭けるものです。今日から明日にかけて株式の価値が大きく変化することは、通常は考えにくいからです。価値が変わらないのに価格が変わるのは、人々の予想が変わるからです。「株が値上がりするだろう」と考える人が増えると株の買い注文が増えるので株価が上がります。

 では、株価の上昇を予想して儲けるためには、何が必要でしょうか? それは、「今日から明日にかけて人々の予想がどう変化するかを予想する」ことですね。しかし、そんなことはできるはずがありません。カジノのルーレットで赤が出るか黒が出るかを予想するのと同じくらい困難なことです(笑)。

 別の方角から見て見ましょう。ある銘柄の株価が1000円だということは、1000円より値上がりすると思って買い注文を出している投資家と1000円より値下がりすると考えて売り注文を出している投資家が同数だ、ということを意味しています。投資家の多くがプロだとすると、プロの半分が値下がりすると考えている銘柄の値上がりを正しく予想するなどということは、素人には無理でしょう。

 したがって、株の短期投資は、基本的には投機的な色彩が強いと言って良いでしょう。ケインズの美人投票の世界ですから、どんな噂が流れて誰が勝つのかを予想するのは難しいのです。

短期投資でも投機的でないものもあるが・・・

 もっとも、短期投資がすべて投機だというわけではありません。たとえば読者の地元のレストランチェーンが最近美味しいメニューを出し、店が混んでいるとします。読者以外の投資家でそのことを知っている人が少ないとすると、次の決算発表の日に株価が暴騰する可能性が高いでしょうから、買っておくのは投機とは言えません。

 あるいはバブルが崩壊して市場がパニックになっている時、毎日株価が大幅安となり、借金で株を買っていた人が投げ売りを強要されているような局面では、「明日もさらに株価が下がってさらに多くの投資家が投げ売りを強要されるだろうから株価はしばらく下がり続けるだろう」と予想して株を空売りすることが合理的かもしれません。

 あるいは、他人より多くの情報を持っている人ならば、短期売買で儲けることも可能かもしれませんが、それも多くのプロが参加しているような大型株では難しいでしょうから、小型株で勝負するということでしょうね。

 筆者にはよくわかりませんが、デイトレーダーと言われる人々の中には、短期売買を得意とする人がいることは確かなようです。しかし、よほど才能に自信がある人以外は、難しいでしょう。読者が短期投資で儲けようと思うなら、小遣い程度で始めて自分の才能を確かめてみることをお勧めします。

 「多くの人間は自信過剰である。人事評価に不満を持っている人が多いというのがその証拠だ」「運転している人の過半数は自分は運転が平均より上手だと思っている」ということを考えると、投資に関しても同様だと考えておいた方がよさそうですから(笑)。

関連記事

新着記事

»もっと見る