世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年8月3日

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  7月16日にフィンランドのヘルシンキで開催された米ロ首脳会談は、会談後の共同記者会見におけるトランプ大統領の発言により、きわめて異様なものとなった。もともと、トランプがロシアのG7復帰を提唱したり、ロシアによるクリミア併合を正当化するような発言をするなどして、ロシアへの過度の宥和をすることが懸念されていた。会談では、こうしたことは回避されたようである。例えば、クリミアについては、プーチン大統領は記者会見で、「トランプはクリミア併合は違法だと言ったがロシアの立場は異なる」と言っている。

(Aksenovko/TMphotoz/LinaTruman/iStock)

  大問題となったのは、2016年の米大統領選挙に対するロシアによる介入疑惑に関するトランプの発言である。トランプは「プーチンはロシアがやったのではないと言っている。ロシアがやったと見る理由はない」と述べた。折しも、7月13日に、ロバート・モラー特別検察官が、選挙介入疑惑によりロシア軍参謀本部情報総局(GRU)所属の軍人12人を連邦大陪審に起訴したばかりである。モラー氏は、今年2月にもロシアの個人13名と3つの企業を起訴している。トランプの発言は、米大統領が米国の捜査機関を信頼しないと言ったに等しい。さらに、捜査にロシアを参加させたいとのプーチンの提案に前向きの姿勢を示した。容疑者を捜査に関与させるようなものであり、常識をはるかに超えている。マケイン上院議員が「記憶にある限り、最も恥ずべき米大統領の振る舞い」と厳しく非難したのをはじめ、共和党議員も含め、米国内で批判の声が沸き上がったのは当然である。

 ただ、皮肉なことではあるが、今回の件を受け、米ロ関係の改善はかえって遠のいたのではないだろうか。トランプといえども、これだけの反発に逆らってまで対ロ宥和を強行するのは困難なように思われる。ホワイトハウスは7月17日付けで‘President Donald J. Trump is Protecting Our Elections and Standing Up to Russia’s Malign Activities’(トランプ大統領は我々の選挙を守りロシアの悪意ある行動に立ち上がる)と題する、次のような骨子からなるファクトシートを掲載している。

・米国の選挙を守る。トランプ大統領と同政権は、我々の選挙制度の高潔さを守る。

・米国内におけるロシアの影響に対抗する。大統領は、米国を損ねるロシアの努力を非難し対抗している。

・ロシアに対する強力な制裁体制を科する。トランプ政権は、ロシアの不安定化行為に対し、最も強力な制裁を科してきた。

・ロシアの侵略に対抗する。大統領は、我々の同盟を強化し、世界中におけるロシアの悪意ある影響に対し立ち上がっている。

 7月20日に米国防省は、ウクライナの防衛支援として、新たに2億ドルを拠出することを発表した。また、米国家安全保障会議(NSC)は、親ロシア派が支配するウクライナ東部の帰属問題に関する住民投票を容認しない、と表明している。NSCは、ウクライナ政府の支配が及んでいない土地で住民投票を行うのは正当性に欠けるとしている。これは、ロシアの立場とは全く異なる。

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