世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年6月26日

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  トランプ米大統領は、6月8日から9日にカナダ・ケベック州のシャルルボワで開催された主要国首脳会議(G7サミット)に際し、ロシアを復帰させて「G8」に戻すよう主張した。トランプは、サミットに出発する前、記者団に対して「自分はロシアにとって最悪の悪夢であった。しかし、なぜロシアなしにこの会合を開いているのか。私はロシアをこの会合に入れるように勧告したい。ロシアを交渉のテーブルに連れてくるべきである。」と述べた。

 ロシアは、2014年にクリミア半島を違法に併合したことにより、G8を追放された経緯がある。トランプのロシア再招待提案は、イタリアを除く5か国の反対でダメになったが、当然のことであろう。シャルルボワ・サミットの首脳宣言では、ロシアについて要旨次のように書かれた。

(iStock.com/Kleptography/ betyarlaca)

 我々は,ロシアに対して、その不安定化させる行動、民主的なシステムを損なうこと、シリア政権への支持を停止するよう求める。我々は、英国のソールズベリーでの兵器級の神経剤を使用した攻撃を非難する。我々は、同攻撃の責任がロシア連邦にある可能性が非常に高く、その他の妥当な説明が存在しないとの英国の評価を共有し、同意する。我々は、ロシアが、その国際的な義務を果たし、国際の平和と安全の維持のための国連安全保障理事会常任理事国としての責任を果たすよう促す。ただし、地域的な危機及びグローバルな課題への対処の上で、我々の国益にかなう場合には、ロシアに引き続き関与する。我々は、クリミアの違法な併合への非難を改めて表明するとともに、ウクライナの主権、独立、国際的に認められた国境内における領域的一体性への揺るぎない支持を改めて確認する。ロシアの行動に応じて必要ならば、ロシアのコストを増大させるために、更なる制限的措置を取る用意がある。

 トランプは、ロシアがG8から追放された経緯を踏まえない、無責任な発言をしたように思われる。ポンペイオ国務長官やボルトン補佐官はこんな発言について、何の相談も受けていないのか、意見も述べていないのか分からないが、今の米政府は機能不全に陥っているのではないかと心配になる。

 トランプは「西側の指導者」ではないことが、今度のG7で明らかになった。ロシアのウクライナ侵攻は、武力により他国の領土を奪うことは許されないという戦後の国際秩序の根幹を侵犯したものであり、それゆえにG8から追放された。このことを軽んじることは、西側が共通の価値として守ろうとしてきた価値、国際法順守を軽んじることである。サミットの席で、トランプはロシアによるウクライナ併合を正当化するような発言をした、とも報じられている。

 トランプは、ルールに基づく国際関係に対する敵対者であると考えた方が正解に近く、戦後のいわゆるリベラルな国際秩序を破壊したいと考えている人物なのではないかと考えざるを得ない。こういうトランプは抑止されるべきである。トランプとの関係に配慮していると、彼の暴走は止まることを知らず、戦後のリベラル秩序が破壊されることになりかねない。

 G6諸国が協調して抵抗すること、米国内では、本来議会の権限である関税についての権限を大統領より取り返すことなど、やれることはたくさんある。

 G7は、もともとオイルショックとそれに続く世界不況への対応を主眼として始まった経済サミットである。そういう意味で、ロシアは経済規模の面でも参加資格がないとも言える。まもなくGDPの規模では韓国に抜かれる可能性が高いし、スペインや豪州とも大差ない。ロシアは「木の生えたサウジアラビア」であると言って良い。プーチンの政治の下、ロシアがそれを超えて発展する見通しは見えない。

 ロシアの歴史では、西洋との関係重視派とスラブまたはロシア主義派が集合として交代して政治指導者になってきたが、親西側の政治家が出てきたときに、その人がロシアを今の停滞より救うように思われる。プーチンが続けば停滞は続き、ロシアの衰退は油価の見通しも明るくない中、続くと思われる。
 

  
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