世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年4月20日

»著者プロフィール

 3月初めに起きた英国ソールズベリーでの元ロシア情報員とその娘、暗殺未遂事件に関連し、欧米諸国は英国に同調し、ロシア外交官(主として情報機関員)の追放に乗り出している。3月26日には、米国は、60人の外交官の身分を持つ者を追放、シアトルのロシア総領事館は閉鎖された。60名の内訳は、国連にいるロシア情報機関員12名と在米大使館の48名である。

(iStock.com/elnavegante/zokru/Vac1)

 今回のスクリパル暗殺未遂事件は、英国とロシアの間の問題からロシアと西側諸国の問題になってきている。米主要各紙も、そうした認識の下トランプ政権の措置を支持し、さらなる措置を求める社説を掲載している。いずれも3月26日付けの、ニューヨーク・タイムズ紙 ‘Tough Action on Russia, at Last, but More Is Needed’、ワシントン・ポスト紙 ‘The Russian expulsions are a good first step. But only a first step.’、ウォール・ストリート・ジャーナル紙‘The Spies Who Went Back to the Cold’などである。

 外交官の追放合戦は、冷戦中も大体2国間の枠内で行われてきたが、今回はそうではなく、これまでのところ、実に27か国が英国に同調し、ロシア外交官150名以上を今回の事件を理由に追放している。前代未聞の事態である。ロシアは報復すると思われるが、外交官追放措置をとった国は自国の外交官が報復され、追放されることを覚悟して、こういうことをしている。軽々しくしていることではない。

 多くの西側諸国が今回の暗殺未遂事件はロシアの仕業であり、それは英国に対するのみならず、国際秩序に対する挑戦であるとの共通認識を持っていることが背景にあると思われる。同時に、多くの西側諸国では、ハッキングなどによる選挙干渉などのロシアの「ならず者国家」的な行為に対し、強い反感があることも今回の措置の背景をなしていると思われる。プーチンのロシアは国際的に孤立しつつある。

 このロシアと西側の対決が今後どうなるのかは、ロシアが今後どういう行動をとるかにかかっている。居丈高な報復は西側諸国からのさらなる措置を呼び起こすことになろう。

 4月5日には、化学兵器禁止機関(OPCW)が、ロシアの提案による合同調査の可否について採決を実施、反対15、賛成6で否決された。ロシアの提案は、英国の要請によりOPWCが開始した独立調査に同国が加われなかったため、新たに合同調査を提案していたものである。これに対し、英国は、ロシアによる責任逃れを狙った邪悪な試みである、と厳しく非難していた。なお、ロイターは、ロシアの提案に賛成した国は、中国、アゼルバイジャン、スーダン、アルジェリア、イランであった、と報じている。4月5日の国連安保理の会合では、ロシアの国連大使が「問題を軽々に扱えば後悔することになる」などと恫喝的な発言をしている。ロシアのこうした言動は、ロシアと西側との対立をさらに深めることになろう。今後予想されるロシアによる偽情報にも注意する必要がある。

関連記事

新着記事

»もっと見る