WEDGE REPORT

2018年8月1日

»著者プロフィール
閉じる

中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 東京や大阪の大半のマンションをすべて自分の目で見て回っているという不動産ジャーナリストの榊淳司氏は、

 「マンションの値下がりはもう始まっている。それを示すように中古マンション市場の動きがかなり怪しい。一般の人は新築マンションの価格は上がっているとみているが、水面下ではもう下がっている」

 と、打ち明ける。2020年の東京オリンピックまでは首都圏のマンションは値下がりしないという見方が多い中で、違う意見を披露してくれた。

(huzu1959/Gettyimages)

暴落の可能性も

 榊氏は現場をつぶさに点検して、実際の成約価格を確認しているだけに、その見方には説得力がある。具体的のどのエリア、どういう物件が下げているのかを尋ねると、

 「2、3年前から大手不動産の物件でも、建物が竣工しても販売が続く『完成品在庫』が目立つようになっている。東京23区内は在庫のヤマだ。こうしたマンションは値引き販売も行われている。特に世田谷、太田、品川区など城南エリアの新築マンションは値引きの嵐になっている。また新築マンションのオフィシャルページなどを細かくみると、キャンペーンと称して実質的な値引き販売をしていることが明らかな物件も多い」

 と話す。これまでは、千代田区、港区、中央区など都心の一等地に立っているマンションは値下がりせず、売り物が中々出ないとされてきた。ところがこうした1億円を超える都心の高額物件も下げてきているケースがあるという。「この数年で50%上がったものが元に戻るのであれば暴落と言えるだろう」と指摘、物件によっては暴落するマンションも出て来ると予測する。

消費税増税まで我慢

 消費税の増税の影響については、

 「前回の消費税が2ポイント上がったときに、不動産売買は半年ほど停滞し、マンションは新築も中古も動かなかった。今回も2019年10月に消費税が上がるとなると、来年の4月まで駆け込み需要があるだろうが、その後に反動が来るので落ち込む。政府は景気対策を打つだろうが、超低金利なので金融政策にはかなり限界がある」

 と指摘する。消費税の増税はマンションの売れ行きに悪影響を与えるとみている。また、東京五輪については「心理的な節目にはなるが、マンション需給には関係ない」と分析する。

 榊氏の見立てでは、既に一部値引きが起きているマンションの価格は消費税増税でさらに下がる可能性もあるとみており、「マンションを買うのは消費税増税後まで待つべきで、急いで今買う必要性はない」とアドバイスする。

 例えば、6000万円マンションを買うと想定して、価格のうち建物の比率が60%とすると建物分は3600万円となり、これにかかってくる消費税増税分2%は72万円になる。しかし、消費税増税でマンションの需給が冷え込んだ場合、榊氏は数百万円の値引きは十分起こる可能性はあるとみている。目先の72万円節約よりも、少し我慢して数百万円の値引きを期待した方が賢い選択になるかもしれないというわけだ。

 榊 淳司(さかき・あつし)1962年生まれ。榊マンション市場研究所を主宰、主に首都圏のマンション市場に関する様々な分析や情報を発信。東京23内、川崎市、大阪市等の新築マンション建築現場を年間500か所以上現地調査し、各物件別の資産価値評価を有料レポートとしてエンドユーザー向けに提供している。主な著書に「20「マンション格差(講談社現代新書)」、「マンションは日本人を幸せにするか(集英社新書)」など。

関連記事

新着記事

»もっと見る