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2018年8月31日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

産經新聞元論説委員長

産經新聞元論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員などを経て、2015年6月から産経新聞社監査役。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 トランプ米大統領弾劾の可能性が現実味を帯びて取りざたされ始めた。就任前からの女性蔑視、人種差別とも思える奇矯な言動、強引な政策遂行などから、いずれ今日の事態もと予測はされてきたが、ここにきて具体的な〝容疑〟の輪郭があらわれている。ひとつは、くすぶり続ける〝ロシア・ゲート事件〟、もうひとつは女性スキャンダルだ。ロシア・ゲートへの大統領の関与が明らかになれば、国家安全保障に関わる深刻な問題であり、間違いなく〝アウト〟だろう。

 女性スキャンダルは、関係のあったポルノ女優に多額の口止め料を払っていたという。合衆国大統領のすることかと呆れる低次元の話だが、過去数十年にわたってアメリカの政治をさかのぼってみれば、大統領をふくむ有力政治家が失脚寸前まで追いつめられたり、実際に政治生命を絶たれてしまったケースがしばしばみられる。セックス・スキャンダルはひとり、トランプ氏にかぎったことではない。アメリカ政治の闇の一端なのだ。

(Dmitry Belyaev/Gettyimages)

口止め料は1400万円

 トランプ大統領の口止め問題は、すでに各メディアで報じられている。2016年の大統領選の際、共和党候補だったトランプ氏が、選挙戦にマイナスになるのを避けるためにポルノ女優に支払った口止め料は日本円で1400万円になるというから驚く。

 トランプ氏の女性関係については、これまでもうんざりするほど聞かされてきたから、それだけなら、多くの人たちが眉をひそめさせながらも、さもありなんと、聞き過ごし、見過ごしたかもしれない。

 問題はカネの出所だ。これもすでに報じられているが、このカネは、トランプ氏の側近が、自らの口座から支払い、後にトランプ氏から返却してもらったというが、返金の出所が選挙資金からだったという疑惑がささやかれている。事実なら、資金を選挙目的以外に使う選挙資金法違反に問われる。側近が自らの口座から口止め料を渡したとしても、その場合、選挙運動に対する個人献金として扱われるが、同法で定められた個人献金の上限を超えている。側近の弁護士はすでに選挙資金法違反などの罪で訴追されており、法廷で「大統領候補の指示」で口止め料を払ったことを認めている。

 トランプ氏は、選挙資金からの返金ではなく自らの資産から支払ったと主張しているが、このあたりは、側近弁護士の今後の証言、トランプ疑惑全体を捜査しているミューラー特別検察官の今後の捜査に待つしかない。大統領が法律違反に関与していたことが明らかになれば、弾劾裁判の十分な訴因になり得るだろう。

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