したたか者の流儀

2018年9月20日

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パスカル・ヤン (Pascal Yan)

著述家

著述家。ルーヴァン・カトリック大学大学院中退(ベルギー)。証券マンとして25年間、欧州を中心に海外で過ごす。現在の職業は都内大学教授。

 

 世の中には、ゼロ金利とかマイナス金利という言葉が跋扈している。物価上昇も実現しないのも日本銀行の悩みの種だろう。米国や欧州に続いて“正常化”したい気持ちは痛いほどわかる。黒田総裁の苦悩も限界に来ているのか、ひと知れず出口戦略に舵を取ったとか、まだといいながら取っているの、ステルス・テーパリング(隠密的金融引き締め)だとか議論が分かれるところだ。

(Kritchanut/Gettyimages)

 そんな金融界の今年の最大の話題は、年末まで3カ月も残しているが、“スルガ銀行”に決まったのではないだろうか。想像できるあらゆる不正が確認され、更に創業家の関連企業に500億円もの資金を融資していることが報道されていている。関連企業でスルガ銀行の株式を保有したり、使途不明の融資まであると出ていた。

 その昔、大手地銀の千葉銀行を舞台としたレインボー事件があった。既に法律の教科書に名をとどめるだけとなり、株主も預金者も従業員もそんな事件を知る者は少なくなったが、今回の一連のスルガ銀行事件は長く語り継がれることになりそうだ。

 本来は、預金を集めて、優良な資金需要には自らリスクを算定し、与信することで利ざやを得ることで成り立っていた。それが、ここ20年にわたって資産の半分近くを国債で運用し、何の苦労もなくわずかな鞘をえていたころが、その後、国債の金利も消えてしまったのだ。

 最近、私は試しに各種の銀行を訪ねてみた。大学からの給与所得や講演や著作権料、果ては、不動産からの収入まで開帳して、お金を借りられるか聞いてみた。

 住宅ローンは65歳なので、年齢的にかなり難しいのはわかるが、たとえば1000万円を住宅ローン並みの金利で貸してほしいというと、十二分に担保を提供しても不可能だというのだ。

 フリーカードローンであれば、400万円まで年率6%でOKという銀行もあったが、最終審査は、そのメガバンクの子会社でサラ金会社が担当するといってきてさらに驚いた。

 なぜ大銀行が、銀行でもない子会社に審査させるのだろうか。サラリーマンとして無担保で高金利の金を必要としているのではないのだが。私のようなケースでは銀行として全く与信のリスクをとれないのだという。大銀行だからかと地方銀行や信用金庫にも聞いていた。

 さらに驚いたことに、「不動産や株をお持ちなら売却したらよいかと存じます」とも言われた。

 多くの銀行は、預貸率の低下や、外債投資の失敗で株価の純資産倍率は退場宣言状態となっている。さらに、優良個人の見込み顧客が資金を借りたいとしているにもかかわらず、戦闘放棄をしているのだ。

 本来、資金の需要にたいして信用を供与し、収益を確保するのが銀行業であるはずだ。しかし、戦後からバブル期まで強い資金ニーズと不動産担保主義で、自らの力で与信能力を高めたとはいえないだろう。

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