したたか者の流儀

2018年6月29日

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パスカル・ヤン (Pascal Yan)

著述家

著述家。ルーヴァン・カトリック大学大学院中退(ベルギー)。証券マンとして25年間、欧州を中心に海外で過ごす。現在の職業は都内大学教授。

 

 6月のこの時期、3000万通以上の議決権行使書がそれぞれの自宅に届いたと思われる。数年前までは、この行使書すなわち株主総会への招待状を受け取った時に、株主懇親会や総会出席土産に思いを馳せて、予定が合えば総会には出席してみようというかという気にさせた。東芝の焼き鳥弁当の廃止や、双日の焼き菓子の手土産廃止の報道が大々的になされたお陰で、個人投資家のスタンスは大きく変った。

(JDawnInk/GettyImages)

 会社から郵便物が届くと、慎重に開封し議決権行使書を取り出し、同封の小冊子にも丁寧に目をやる。総会の日時や場所、議案が掲載された冊子は必ず入っている。その裏表紙当たりに、昨今ご注意が載ることが多くなった。

 かつては、ホテル・オークラとか帝国ホテルを開催場所として定着している企業が多かったようだが、ここ数年最後まで場所がわからない場合も多い。そこで本年の総会会場は、XXホテルになりますという注意が重要なのだろう。

 その下に、さらに赤字または太字で総会手土産の準備はございませんという通告がある。そのお知らせがなければ、従前通りとなるが、例年どおり土産を配る企業もやや投げやりで、自社の製品で人気薄のようなものを配っている印象がある。

 本当に記念になるように、トヨタ自動車などは趣向をこらしたミニカーが配られたようだが、趨勢としてみやげ物、謝恩会の廃止の動きが強いといる。年末には詳細なデータが出ることになるが、個人投資家の間で注目度の高い株主優待は継続するが株主総会関連で個人に対するサービスはやめる方向といえるだろう。

 ちなみに、配当利回りが高く安心感のある大手総合商社の総会は、今年一部報道によると個人株主の参加が激減しているとしていた。

 グループ内の株式持ち合い比率は順調に低下し、現在10%程度となっているようだが、それでも大株主との間で、議案は事前に揉んでいることであろう。したがって、人数だけは多くても、保有比率は全体の2割しかない個人株主をわざわざ総会に参加させて、意味不明な質問に答えるのも無意味だと判断しているのだろう。敢えて参加のインセンティヴを廃止している最中とみえる。

 そもそも株主総会での質問は大株主からは出ないと考えていい。退職した元従業員が社内や工場でしかつかわない暗号のような言葉をつかって質問し、出世した後輩を懲らしめるように詰問調であったりすることが多かった。

 また、利用者として何らかの不満があり例年株主総会で同じ質問することで溜飲を下げている場合も多かった。

 会社側も心得たもので、「貴重なご意見有り難うございました。今後の経営に生かさせていただきます」、「ハイ、次の方。株主番号とお名前をおねがいします」となる。時々、質問者がさらにマイクをとって、別の質問で会社側につめよっても、議長は慌てず騒がず「それも、大変貴重なご意見ですので、大切に生かせていただきます。ハイ次の方」となり、場内からは失笑が漏れることになる。

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