前向きに読み解く経済の裏側

2018年10月9日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 今回は『老後破産しないためのお金の教科書 』の著者である塚崎が、無料で得られるアドバイスについての注意事項を記します。

 「タダほど高いものは無い」と言われます。「セールスパーソンから不用意に受け取った安価なプレゼントによって、義理を感じて高いものを買わされる羽目に陥った」といった経験を持つ人も多いでしょう。

 しかし一方で、日本人は「情報は無料だ」と思っている人が多いので、要注意です。情報もプレゼントも、渡す側の目線で考えれば同じことなのですから。

(IconicBestiary/Gettyimages)

無料の情報を提供する側の目線で考える

 無料で情報を提供する人は、何を考えているのでしょうか。本当に相手のためを思って親切で情報を提供しているのでしょうか。そんな慈善事業のようなことをして、どうやって生活しているのでしょうか。そう考えると、何か魂胆があるのかもしれない、という気がしてきますね。

 飲食店で「オススメは?」と聞く客がいます。その客が、今日はじめて来店した客であっても、今後もリピート客になりそうなら、店は本当のオススメを答えるでしょう。しかし、観光地の飲食店で、客が二度と来ないとわかっていたら、もしかして利益率の最も高い品を勧めるかもしれません。

 もちろん、「どのメニューも利益率は同じだから正直にオススメを答えている」という店もあるでしょうが、「観光客にオススメを聞かれたら勧めるメニュー」をあらかじめ定めて、それだけ利益率を特に高く設定している可能性もあるわけです。

 ちなみに、読者は本稿を無料で読んでいるでしょうが、これは本来の意味の無料のサービスではありません。筆者はサイト運営者から原稿執筆料を受け取り、サイト運営者は広告料を得ていますから。筆者もサイトも、慈善事業ではなく、仕事としてやっていますから、変な魂胆はありません。ご安心下さい。

金融商品も投資商品も無料のアドバイスには要注意

 保険商品の情報を個人に無料で提供する会社がありますね。あの会社は従業員の給料をどうやって払っているのでしょうか。当然、保険会社から手数料を受け取っているはずです。

 すべての保険会社がすべての保険商品に関して全く同じ手数料を支払っているのだとしたら、情報提供会社は本心から客のために保険商品の説明をするでしょう。その場合には、気をつけなければいけないことは一つだけです。彼らは仮に客が保険に加入すべきでない場合でも、「お客様は保険に入る必要がありません」とは絶対に言わない、ということですね(笑)。

 しかし、保険会社によって、あるいは保険商品によって、情報提供会社に支払われる手数料が異なるとしたら、どうでしょうか。相手の立場に立って考えてみましょう。

 証券会社が無料の投資セミナーを開催するのはなぜでしょうか? 親切だから慈善事業的に情報を提供しているのでしょうか? そんなことをしたら、株主から「そんな金があるなら配当しろ」と怒られそうですね(笑)。

 もちろん、「インフレに備えて資産の一部は株で持ちましょう」といった顧客のためを思ったアドバイスをすることも重要で、その「ついでに」株式売買手数料が稼げれば「ウインーウイン」の関係だ、ということなのでしょうが、その際に顧客に最適なアドバイスをしているのか否かは、慎重に見極める必要がありますね。

 銀行が投信や保険を売る際も同様です。「貯蓄から投資へ」といった流れに顧客を誘導すること自体は良いことですが、その際に手数料の高い商品を勧めたり、頻繁な乗り換えで何度も手数料を稼ごうとしたりする可能性もあるので、アドバイスを鵜呑みにせず、自分でしっかり考えてから行動しましょう。

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