前向きに読み解く経済の裏側

2018年9月25日

»著者プロフィール
閉じる

塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

(gustavofrazao/Getttyimages)

 今回は『老後破産しないためのお金の教科書 』の著者である塚崎が、自社株より異業種の株に投資すべき理由について解説します。

 企業が役職員に自社株の保有を勧める場合があります。役員であれば、会社の経営に責任を持っているわけですから、報酬を株価連動にする等々を含めて、自社株を保有してもらうことは合理的でしょう。会社の業績を改善して株価を上げれば自分が豊かになれる、というインセンティブで大いに頑張ってもらう、という意味と、会社の経営を誤って株価が下がれば、当然自分も責任を感じて株価下落による損を引き受けてもらう、という意味の両方を込めて、です。

 従業員にも持株会等を勧めるのは、会社の一員としての自覚(忠誠心?)を持ってもらうということなのでしょう。もしかすると、社員の忠誠心を測るために持株会を作っているのかもしれませんね。

 しかし、筆者は従業員が自社株を持つことには賛同しかねます。最大の理由は、リスク分散ができないからです。会社が発展すれば、給料も退職金も増え、持ち株も値上がりしますが、会社が倒産すれば給料も退職金も持ち株もすべて失います。そんなリスクはゴメンです。

 自社株を売る場合には、会社からは忠誠心を疑われ、社外からはインサイダー取引を疑われ、売りたい時に売れずに売り時を逃す、といった可能性もあるでしょう。

 福利厚生として、会社が持株会に補助金を出す場合もあるようですし、会社に忠誠心を示したい場合もあるでしょうから、そうした特別な事情がある場合には構いませんが、そうでなければ上場会社の持株会に加盟するのは考えものです。もちろん、急成長している非上場会社の場合には、将来会社が上場して社員全員が億万長者になるといった可能性もありますから、それは別の話ですが。

同業他社の株も避けよう

 自分の業界のことは、自然と情報が耳に入ってくるので、インサイダー情報でなくても、物知りになります。しかも、親しみも湧きますから、どうせ投資をするなら、自分の業界の企業に投資しよう、と考える人もいるかもしれません。

 しかし、私の友人の体験談を聞くと、それもあまりお勧めできません。私の友人で、「わが社がライバルとの競争に負けた場合に備えた分散投資として、自社株を買わずにライバル会社の株を買おう」と考えた慎重な人がいました。とても思慮深い人だと尊敬していましたが、結果は残念なものでした。業界自体が構造不況業種になり、両社とも倒産してしまったのです(笑)。

 この話の教訓は、分散投資をする時には、異なった株価の動きをする銘柄に投資しよう、ということですね。業界内の会社は、業界全体に逆風が吹くと、全員枕を並べて討ち死に、という可能性がありますからね。

関連記事

新着記事

»もっと見る