前向きに読み解く経済の裏側

2018年8月14日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 高金利通貨が暴落した時は、さらに暴落を続ける力と戻る力が綱引きをし、後者が勝つとは限らない、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は警告します。

(Milkos/Gettyimages)

 トルコの通貨が暴落しています。いわゆる高金利通貨なので、トルコの通貨を持っている投資家も多いと思いますし、「大きな損を抱えているから、いまさら売れないので、このまま持っていよう」「こんなに安くなったのなら、これから買おう」と考えている投資家もいると思います。

 筆者は、トルコについては何も知りませんが、一般論としての注意事項をお知らせするために、x国の通貨である高金利通貨xドルが暴落した場合に注意すべきことについて記すことにします。

現在の経済に相応しくないほど売られている可能性は大

 前回記したように、通貨が暴落すると、「売りたくない売り」の注文が大量に出てきますから、「正しいxドルの値段(x国経済の現状に相応しいxドルの相場。ファンダメンタルズを反映したレート、などとも呼ばれる)」よりも大幅に安くなっている可能性は大きいでしょう。

 たとえば借りた米ドル(またはユーロ、円などの先進国通貨。以下同様)でxドルを買っている海外投資家が借金の返済を迫られた場合には、「今の相場ならさらに借金をしてxドルを買いたいのに」と考えながらも借金返済のために泣く泣くxドルの売り注文を出す、という具合にです。

 しかし、仮にxドルが正しい値段より大幅に安くなっているとしても、読者がxドルへの投資を検討しているとすれば、それはハイリスク・ハイリターンのバクチだとしっかり認識した上でご判断ください。現在持っているxドルが損失を抱えている場合に、損切りをせずに相場の回復を待って持ち続けることも、同様のバクチであると、しっかり認識して下さい。

 筆者は賭け事を悪いとは思いませんが、自分がどれくらい儲かる(損を取り戻す)チャンスがあるのか、そのために自分がどれくらいのリスクを抱えているのか、という事をしっかり認識した上で判断する必要があるからです。

適正レートに戻る可能性も大

 適正レート以上に通貨が売り込まれた場合には、「後から考えると絶好の買いのチャンスだった」という場合も少なくありません。

 まず、米ドルをxドルに交換すると、経済実態からは考えられないほど巨額のxドルが手に入ります。

 しかも、おそらくxドルの金利は高騰しているでしょう。X国の投資家が米ドルを買わないように、外国の投資家がxドルを買うように、「xドルは高金利だから、x国の国債を買いましょう」というx国中央銀行からのお誘いが来ているはずだからです。これを「通貨防衛のための利上げ」などと呼びます。そこで、巨額のxドルを高い金利で運用して巨額の金利収入(ただしxドル建て)が得られるでしょう。

 多くの投資家がx国中央銀行の誘いに乗れば、皆が米ドルをxドルに替えてx国の国債を買うでしょう。そうなれば、xドルの値段が戻るのです。市場の世界は「美人投票」なので、多くの投資家が「他の投資家は中央銀行の誘いに乗るだろう」と考えるか否かで方向が決まり、一度方向が決まると皆がその方向に向かうので、一気にxドルの値段が戻る場合も少なくありません。

 あるいは、消費者が動くかもしれません。x国の消費者は、輸入品が値上がりするので、輸入品の消費を控えるでしょう。一方で、外国の消費者は、x国の商品がとても安くなるので、大量に買うでしょう。それにより、x国の貿易収支が膨大な黒字となるでしょう。そうなれば、x国の輸出企業が海外から持ち帰った米ドルをxドルに替えることによりxドルの値段が戻るかもしれません。

 こうしてxドルの相場が戻れば、海外の投資家は、安く買ったxドルを高金利で運用して増やした上に高値で売って多額の米ドルを持ち帰る、ということが可能となります。ハイリターンですね。しかし、世の中はうまい話ばかりではありません。ハイリスクについては以下で。

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