前向きに読み解く経済の裏側

2018年10月15日

»著者プロフィール
閉じる

塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

(heckmannoleg/Gettyimages)

 今回は『老後破産しないためのお金の教科書 』の著者である塚崎が、「株式市場は美人投票」と言われる理由について解説します。

 「株式市場は美人投票だ」と言われます。経済学者ケインズの言葉なのですが、その意味を知っている人は意外と少ないようです。以下、厳密ではありませんが、イメージを掴んで頂けるように説明して行きます。

 現在の美人投票は、審査員が壇上の女性を見て、美人だと思った候補に投票し、最も得票の多かった候補が優勝してトロフィーを受け取ります。しかし、ケインズの時代の美人投票は、優勝した候補のみならず、その候補に投票した審査員も「美的センスが高い」という賞品がもらえましたから、話は複雑でした。

 自分が美人だと思っても、他の審査員がそう思わなければ、その候補は優勝しませんから、その候補に投票しても賞品はもらえません。賞品が欲しければ、他の候補が投票しそうな候補に投票すべきなのです。

 そうなると、他の審査員たちの審査基準が気になります。顔だけ見るのかスタイルも見るのか、目に注目するのか口元に注目するのか。他の審査員が見ていないポイントをチェックしても仕方ありませんから。

 さらに言えば、審査員たちは壇上の候補を眺めるよりも、審査員席の噂話を気にするようになります。「どの候補が優勝するという噂が流れているのか」という情報が最も価値があるわけです。その噂に沿って皆が投票するでしょうから、噂通りの結果になる可能性が高いからです。

 場合によっては、「候補Cが審査員に賄賂を贈ったらしいからCが勝つだろう」という噂が流れて、審査員たちが「Cが勝ちそうだからCに投票しよう」と考えて、実際にCが勝つかもしれません。そして、重要なことは、その噂が嘘であっても審査員が信じればCが勝つということです。

 審査員の中にCの親友がいて、Cが賄賂を贈っていないことを知っていたとしても、Cに投票するのが賢い行動です。真実を知っているから儲かるという訳ではありませんから。

 株式市場も、上記と同様だ、というのがケインズの教えです。株式投資で儲けようと思ったら、何が真実かを探求するのではなく、他の投資家が何に投資するのかを探るべきだ、というのです。

 一歩進めると、経済統計などで何を見たら良いのか、ということにも関わってきます。たとえば、市場関係者は金融政策に強い関心を持っています。金融が緩和されるという噂が立つと株価が上がるからです。したがって、日銀総裁の発言などには投資家たちが強い関心を示します。

関連記事

新着記事

»もっと見る