世界で火花を散らすパブリック・ディプロマシーという戦い

2018年11月2日

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桒原響子 (くわはら・きょうこ)

PD・国際公共政策研究者

1993年生まれ。愛知県出身。2012年米国ウエストバージニア大学留学中、国際政治学や通訳翻訳等を学び、2017年大阪大学大学院国際公共政策研究科修士課程修了。公益財団法人笹川平和財団安全保障事業グループ研究員等を経て、現在、パブリック・ディプロマシーに関する研究活動等を行う。

 中国の「シャープパワー」が、米国をはじめ国際社会で話題となり、日本でも注目されるようになってきた。米国の危機感の高まりは、中国のパブリック・ディプロマシー(PD)を、ソフトパワーではなく、プロパガンダなどと批判するようになったことに現れている。2017年末、米シンクタンクの全米民主主義基金(NED)がそうした中国の力をシャープパワーと命名し、たちまち豪州などでも注目を集めることとなった。

 しかし、トランプ大統領のように「中国のPDはスパイ活動だ」と豪語し、中国の働きかけをFBIの捜査対象とするなどといった対抗策を取ることは、どの国にとっても容易いことではない。とりわけ、中国と経済関係の深い途上国は、自国の発展・成長のために中国からの経済支援を必要としている。中国と関わりの深い途上国では、中国からの経済支援とPDが密接に関わりあっているのである。前稿(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14382)では中央アジアや東南アジアといった地域に見る中国のPDを見てきたが、今回はその続編として、こうした中国の野心的なPDに抗えないでいる国や地域について紹介しよう。

9月に行われた「中国アフリカ協力フォーラム」。アフリカにおける中国の存在感は大きいが……(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

太平洋島嶼国に対する中国の「支援」

 まず、太平洋島嶼国である。中国はここ数年の間に、この地域で経済支援分野を中心にプレゼンスを急速に拡大させている。太平洋島嶼国全体に対する中国の支援額は、2005年には4百万米ドルと少額であったものの、5年足らずで約40倍にまで拡大した。

 こうした中国の動きに対し、米国をはじめ周辺国が警戒を強めている。オーストラリアのフィエラバンティ・ウェルズ国際開発・太平洋担当相は、2018年1月、「太平洋島嶼国において『無用の長物』でしかないインフラ事業に投資している」と中国を批判した。またニュージーランド政府は、同年4月、バヌアツにおいて中国が恒久的な軍事拠点化を進めていることに反対の意向を示した。バヌアツは、南シナ海における領有権問題で中国支持の立場を取っている数少ない国の一つである。

 中国は、パラオ、フィジー、パプアニューギニア、サモアといった太平洋島嶼国に対し、軍事から、漁業を中心とした経済、文化、教育、医療病院、村落開発に至るまで幅広い支援を行なっている。太平洋島嶼国には、こうした中国からの投資や貿易の拡大を歓迎する声が多い。GDPの多くの部分を、外国からの援助に頼る太平洋島嶼国にとって、中国からの経済援助は欠かせないからだ。

 そして中国は、太平洋島嶼国地域に対するPDを、経済支援と同時進行で行ってきた。中国中央電視台(CCTV)の無料放送(フィジー、トンガ、バヌアツ向け)をはじめ、2013年以降は、奨学金提供、技術専門家育成支援、研修プログラム実施、2012年のフィジー南太平洋大学における孔子学院設置と、多角的に展開されている。

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