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2018年11月6日

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川手恭輔 (かわて・きょうすけ)

コンセプトデザイン・サイエンティスト

1990年代から、大手メーカーでインターネットサービスの企画・開発・運用を手がけ、自ら立案したグローバルなサービスを複数立ち上げた経験を持つ。その1つは、サービスのデザインでグッドデザイン賞を受賞した。コンピューターサイエンス関連の翻訳本も多数ある。

(romrodinka/Gettyimages)

 トヨタ自動車と西日本鉄道(西鉄)は、11月1日から福岡市およびその周辺地域において、トヨタが提供するmy route(マイルート)というスマホアプリを使ったマルチモダールモビリティサービスの実証実験を始めると発表しました(10月31日)。このmy routeは、日本における初めての本格的なMaaSと言えるものではないでしょうか。

 すでにトヨタは、ソフトバンクと共同でMONET Technologiesという会社を設立して、多目的に活用できるトヨタのモビリティサービス専用次世代電気自動車e-Palette(イーパレット)による、Autono-MaaS事業を展開すると発表して大きな話題になっています。Autono-MaaSは、e-Paletteという「移動する部屋」を提供します。サービス事業者はその「移動する部屋」を使って、移動中に料理を作って宅配するサービスや、診察を行いながらの病院送迎サービス、そして移動型オフィスのサービスなどをエンドユーザーに提供します。

 一方、my routeは電車やバスなどの公共交通、タクシー、そしてレンタカーや自転車のシェアリングなどの、複数の(マルチモーダルな)モビリティサービスを統合して、目的地までの移動ルート検索、モビリティサービスの予約・支払いなどをシームレスに行うことができるようにするプラットフォームです。これは、フィンランドのヘルシンキで住民の約4%が使用するMaaS Globalというベンチャー企業のWhim(ウィム)や、ロサンゼルス市が行政サービスとして2016年から提供しているGoLA(ゴーエルエー)と同様のMaaSです。

 福岡市の実証実験では、シェアサイクルのメルチャリと、タクシー配車サービスのJapanTaxiと連携しており、ルート検索後にそれぞれのアプリが起動され予約などを行うことができます。レンタカーはトヨタレンタカーです。西鉄は自社が運行するバスの位置情報を提供し、my routeアプリ内限定で福岡市内フリー乗車券のデジタル版を販売します。通常の「1日券」に加え、短時間滞在のビジネスパーソンや旅行者に、気軽にバスを利用してもらうための「6時間券」も購入することができます。

 実はmy routeは、福岡市以外でも誰でも使うことができます。東京では、シェアサイクルはドコモのバイクシェアになり、その他の地域ではmy routeからJapanTaxiのアプリへの遷移はなくなってしまいますが、マルチモーダルなMaaSを体験することができます。まだ検索に時間がかかったり、表示のバグがあったりします(11/1現在)が、シンプルで使い勝手の良いMaaSアプリです。

 

 トヨタはMaaS Globalやロサンゼルス市と同じく、MaaSオペレーターという事業者ということになりますが、その収益モデルは明らかにしていません。プレスリリースでは、生活者や観光客にとって利便性の高いサービスの提供について検討してゆくとしていますが、トヨタの狙いはどのようなものでしょう。

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