立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2018年11月27日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表兼首席コンサルタント

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。現在マレーシア・クアラルンプール在住、中国、ベトナムと東南アジアで活躍中。

 

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エチオピア首相が訪中・2018年9月2日(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

論理的な誤認

「中国人の方ですよね」。――ビクトリアフォールズ国際空港の出発保安検査場では、たまたま前に並んでいた白人夫婦と目線が合ったので、「ハロー」と私が会釈すると、紳士のほうが親しげに声をかけてきた。

「いいえ、日本人ですが」と答えると、向こうはすぐに頭を下げて謝ってきた。「すみません。ラウンジ利用券をお持ちなので、中国人ではないかと、ついに口走ってしまいました。本当に失礼しました」。私のシャツのポケットから派手なラウンジ利用券が3分の1ほど顔をのぞかせていた。なるほど、ビジネスクラスを利用するアジア人はほとんど中国人だったのだ。

奇妙な空港ラウンジ食事

 まだまだある。乗継ぎのエチオピア首都アディスアベバのボレ国際空港のラウンジでは、奇妙な食事が用意されている。それは豊富なラーメン・メニューとお粥である。なぜならば、中国人乗客がラウンジの主要利用者だからである。

エチオピアの首都・アディスアベバのボレ国際空港のラウンジで提供されているラーメン

 今回のアフリカ旅行は往復ともアディスアベバ乗継ぎで、空港ラウンジでの滞在時間が長い。その時間を利用して周囲を観察していると、中国人ビジネスマンの客が多いことに気付く。彼らの胃袋を癒すためにも、ラーメンやお粥が必要なのだ。英語のできない中国人客は中国語で「メンティオ、メンティオ」(麺条=ヌードル)と懸命にラウンジ・スタッフへ要求する一幕もあったりする。通訳してあげると、「シェシェ」(謝々=ありがとうございます)と礼を言われた。

同じくボレ国際空港のラウンジで提供されているお粥

 ラウンジの滞在中に、中国人ビジネスマンたちは時間を無駄にせず、ひっきりなしに業務打ち合わせをこなしている。隣席のグループの会話が断続的に耳に入るが、やはり案件進捗の確認や問題洗い出し、解決案の検討といった内容だった。一人旅の中国人ビジネスマンは、ラーメンをすすりながら、パソコン画面とにらめっこしてメールの処理に追われていた。

ボレ国際空港のラウンジで見かけた中国人ビジネスマン

 そういう風景は一昔の日本人ビジネスマンにも見られたものだった。しかし、ここアフリカの空港ラウンジでは、ついに私は日本人ビジネスマンを目撃することはなかった。なるほどザ不思議が解けた。白人夫婦の判断にはしっかりした根拠があったのだった――。空港ラウンジを利用するアジア人は中国人である。

アフリカを席巻するチャイニーズパワー

「ニーハオ!ラオバン」(中国語=こんにちは、社長さん)。空港だけではない。ナミビアやジンバブエ、ザンビア、そしてボツワナ、どこへ行っても、アジア人と見るや中国語の挨拶。なかに北方系中国語の独特な巻き舌までこなしている中国語達者な黒人もいる。どこで勉強したのだろうか。

 アフリカを席巻するチャイニーズパワー。もはや日本企業が挽回しようとも遅きに失した感が否めない。いや、そもそも時期の問題ではない。構造的な問題なのだと思う。

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