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2018年12月14日

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佐藤由利子 (さとう・ゆりこ)

東京工業大学環境・社会理工学院融合理工学系准教授

東京大学教養学部卒業、東京工業大学社会理工学研究科にて学術博士号取得。国際協力事業団(JICA)勤務、東京工業大学留学生センター准教授を経て、2016年から現職。

RIKA HAYASHI/GETTYIMAGES

 外国人留学生が日本で高等教育を受け、将来企業で活躍するためには、日本語能力の習得が欠かせない。留学生雇用に関する企業調査でも、日本語能力が留学生に求める資質の上位に挙げられることが多い。彼らの日本語能力の基礎を養成する役割を担っているのは日本語学校である。しかし、非漢字圏からの留学生の急増にもかかわらず、日本語学校の教育の質をチェックする仕組みが不十分であるため、様々な問題が生じている。

 日本学生支援機構によれば、2017年に日本語学校で学ぶ留学生は7万8000人に上り、留学生全体の3割を占める。12年から17年にかけて、留学生数が1・6倍に伸びる中、日本語学校で学ぶ留学生は3・3倍に増加した。その背景にあるのが非漢字圏からの留学生の急増で、日本語学校では6割を占める。ベトナム人留学生は15・1倍、ネパール人留学生は5・8倍に増加している。

(出所)日本学生支援機構のデータを基にウェッジ作成 写真を拡大

 非漢字圏からの留学生は、中国、韓国などの漢字圏出身者に比べ、高等教育を受けるのに必要な日本語能力の習得に時間がかかることも、日本語学校での在籍率の高さにつながっている(能力や学習頻度にもよるが、漢字圏出身者は約1年、非漢字圏出身者は約2年といわれる。なお、日本語学校の在籍上限は2年間)。

 このような非漢字圏出身学生の急増は、日本語教育の現場に混乱をもたらしている。日本語教育学会元副会長の嶋田和子氏は、現場の日本語教師から「日本語の習得が遅く、初級を繰り返し学習する学生が増加した。初級が終わっても会話ができない学生が多い」「漢字に対して苦手意識を持つ学生が多い」といった非漢字圏出身者特有の学習課題に加え、「学習意欲が低い上、受け身の姿勢の学生が多い。そもそも目的意識の低い学生が多く、進路相談で苦労する」「出席率のためだけに通学している学習者や、脱力感の漂う学習者もいる」といった、学生の動機や学習態度に関する問題を指摘する声があると述べている。

 この背景には、アジアの中でも所得水準が低いベトナム、ネパールなどからの留学生の多くが、留学費用を借金して渡日し、その返済や生活費捻出のため、日本語学校で学ぶ間も、アルバイトに追われているという現状がある。

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