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2018年11月16日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

中部圏社会経済研究所研究部長

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。12年4月より現職。*記事はすべて筆者の個人的見解であって、筆者の所属組織とは無関係です。

(写真:AFP/アフロ)

強まる企業の人手不足感

 日本銀行が先月1日に発表した9月の「全国企業短期経済観測調査(日銀短観)」によれば、中小企業を中心に企業の人手不足感が深刻化している。実際、企業の従業員の過剰感を示す雇用人員判断DIは▲33(マイナスは不足感が強いことを表す)と、バブル期1992年3月以降では最大の水準を示している。

 こうした深刻化する一方の人手不足に対処するため、また、国際競争力の維持を優先し賃上げに消極的な産業界からの強い要請を受け、安倍内閣では、外国人労働者の受け入れを拡大する「入管難民法改正案」を12月10日の今国会の会期末までに成立させ、来年4月1日に導入することを目指している。

 同改正案の目玉は、一定の技能が必要な業務に就く「特定技能1号」と、熟練技能が必要な「特定技能2号」という新たな在留資格の創設である。1号は在留期限が通算5年で家族の帯同は認められないのはこれまでと同様であるのに対して、2号は在留期限を更新でき、さらに配偶者と子どもを帯同できることになる。これまで、高度専門人材に限ってきた外国人労働者の受け入れを単純労働にも広げることになり、さらに2号に関してはこれまでの移民禁止政策から実質的な移民受け入れ政策への大転換とも受け取れる。

外国人労働者に対する漠然とした不安と高まる依存

 一方、国民の間では、全面的な外国人労働者の受け入れに対して、職を奪われるかもしれない恐怖、治安悪化や生活文化の違いからくる様々な軋轢への懸念等から依然アレルギーが強い。また、あらゆる事象を政権批判に結び付け、支持率を上げたい野党は、国民の漠然とした不安に付け込んで、政府の再三にわたる否定にもかかわらず同改正案は実質的に移民に門戸を全面的に開放するものに他ならないとして政権批判に利用し、国民の不安を煽っている。

 しかし、現実には、農業や建設業では技能実習生が、コンビニでは留学生が活躍し、彼ら彼女らなしには現場が回らないほど外国人労働力への依存が進んでいるのも事実だ。厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況」によると、2017年10月末の外国人労働者数は128万人と、調査開始以来、初めて100万人を超えた昨年の108.4万人から+18%増加し、過去最多を更新している。

外国人労働力の受け入れを政争の具とするな

 日本経済の屋台骨を支える中小・零細企業の人手不足に対して早急な対応策が必要な事情も理解できる一方、欧州の移民政策の帰結に鑑みると、たった1カ月程度の議論で事実上の移民受け入れへと舵を切ってしまうのは拙速であるとの批判も説得力がある。

 しかし、外国人を労働力として受け入れるにしても、移民として受け入れるにしても、建前とは言えこれまで外国人の受け入れを全面禁止していた政策の方針転換を図るのであるから、財界の一時的な利益のためでも、政権批判の道具や政争の具とするのでもなく、国民の総意が奈辺にあるのか確かめつつ、政党間で建設的な議論を行うことで、将来に禍根を残さない意思決定を行う必要があることは論を待たない。

 なお、外国人労働力を受け入れるにあたっては、様々な課題があるが、本記事ではそうした側面については一切割愛し、政府や財界が主張するように、現在や将来の日本が人手不足であるとして、どの程度の外国人を労働力として受け入れる必要があるのか、その数を定量的に明らかにすることに焦点を当てていることに留意願えれば幸いである。

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