WEDGE REPORT

2018年12月14日

»著者プロフィール

 神奈川県藤沢市にある湘南台駅から自動車で約10分。住宅地の中にビニールハウスがある。このビニールハウスの中で介護付有料老人ホーム、クロスハート湘南台二番館(社会福祉法人伸こう福祉会) の入居者が、野菜を育てている。中に入ると、高床式(高さ85~90センチ)の台(ベッド)には砂が敷き詰められ、IoT技術を使い自動で液肥を流すためのパイプが引かれており、フリルアイス、ルッコラ、小松菜、イチゴ(取材時は11月中旬)が育てられていた。腰高のベッドは、車椅子に乗ったままで作業することも可能だ。

湘南台にあるトレファーム

 高齢者施設への入居者の中には「何か仕事したい」という人が少なくない。伸こう福祉会では、洗濯物をたたんだり、掃除、食事の配膳をしたりするなど施設内の作業をすることで、「施設内通貨」を付与して物品を購入することができる取り組みを行ってきた。こうした取り組みが高齢者の生きがい、ひいては、健康寿命延伸に繋がるのではないか。関係者の思いが繋がり、この農業施設は2017年11月に建てられた。

 農業施設『トレファーム』を提供したのは東レグループの「東レ建設」。2014年から『トレファーム』事業をスタートしている。砂栽培は小松菜、リーフレタスなどの葉物野菜から、オクラやミニトマト、イチゴ、メロンまで栽培することが可能だ。なぜ、建設会社が野菜栽培の施設を手がけるのか。ハウス内に並べられたベッドを見ればその答えがわかる。建設現場でよく見られる、仮設資材(足場材)でベッドが作られている。

砂地に育つ小松菜

 建設業界では、国内市場が縮小していく中で、農業に参入する事例が増えている。東レ建設もそのうちの1つであるが、「単純な農業ではなく、そこに付加価値をつけることができないか?」(東レ建設トレファーム事業推進室室長の北川康孝さん)と考えた。汎用性があり、頑強な建設資材を活用して「高床」にすることで、座ったままでも作業できるように、身体への負担を軽減することを考えた。さらに、砂を使うことによって連作が可能になり、農業の世界で言われる「土作り3年」といった技能習得も省くこともできることが分かった。加えて特別な農機具も不要である。こうした特長により、「たのしく、楽に、安全に」農業ができる施設の普及を目指し、東レ建設では農業への参入を決めた。

 施設整備が必要となるものの、前述の作業性の良さや、自動灌水システムにより初心者でもという点で、新規就農者にも適合する。また砂栽培の特長を生かし濃い味の野菜が育てやすいという点では、プロ農家向けにも訴求することができる。ターゲットも全方位的に展開可能だ。

関連記事

新着記事

»もっと見る