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2018年12月27日

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小川たまか (おがわ・たまか)

フリーライター

1980年東京生まれ。教育、働き方、性暴力などを取材。『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(2018年/タバブックス)。Yahoo!個人「小川たまかのたまたま生きてる」(https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/)などで執筆。Twitter:@ogawatam

毎月のように、新しい子育て本、教育本が書店に並ぶ。教育熱心な親、子育てに悩む親がそれだけ多いということなのだろう。教育に関してはさまざまな考え方があり、どのような考え方を選ぶかは各家庭の裁量だ。ただ、一つの考え方に固執するよりも、他種多様な手段・方法・考え方を知って選択肢を持っておきたい。正解はないが、結果はあるのが子育て。あなたは親としてどう子どもと向き合いたいだろうか。この連載では、教育関連本を出版した著者の方たちにインタビューしていく。
(emeliemaria/iStock/Getty Images Plus)

 脳研究者が子育てしながら子どもの成長を見守ったら、どんなことがわかるのか。『パパは脳研究者』は、脳の研究者である池谷裕二さんが、長女が4歳になるまでの成長過程をつぶさに綴った一冊だ。幼児の行動は大人にとって不思議に感じることが多くある。たとえば泣いていたのに、次の瞬間にはケロッと笑い出すこと。これを池谷さんは「記憶がもたないから、過去と未来がつながらない」と説明する。「作業記憶」が発達して始めて、人間は「根に持つ」ことができるようになるのだという。

 育児についての話を伺いに池谷さんとお会いしたが、話題は今年のジェンダー問題にも流れ……。(取材日:2018年9月12日)

池谷裕二(いけがや・ゆうじ)さん
研究者、薬学博士。東京大学・薬学部教授。専門は神経科学および薬理学で、脳の成長や老化について探求している。『海馬』(新潮文庫)、『進化しすぎた脳』(講談社ブルーバックス)、『受験脳の作り方』(新潮文庫)など著書多数。

生物学的な正しさと社会的な正しさは違う

――『パパは脳研究者』の中に、オキシトシンの話が出てきます。出産後の母親は、「愛情ホルモン」とも言われるオキシトシンがいっぱい出て、子どもを愛しいと感じる。一方、父親の場合は自動的には出ないけれど、育児をすればするほどオキシトシンが放出されるという。

池谷:変な話です。生物として、もともと男性に「母性本能」は備わっていない。けれど、育児すればオキシトシンは出るのです。子育て大好きパパに誰でもなれる。人間は男でも女でもオキシトシンを持っているのだから、育児して増えるのであれば育児すればいいと思います。

 「おっぱいをあげられるのはお母さんだけ」とも言いますが、プロラクチンというホルモンを注射すると男性もおっぱいが出る。男性にも乳腺があるのですよ。

――なんと。そうなんですか。

池谷:男女は非常に異なるように見えるかもしれませんが、実際はほぼ同じで、ごく一部が異なる。でも異なるところにばかり目が行くから、ものすごく異なるような気がしているのでしょう。

――今年はジェンダーの問題がいくつも話題になりました。5月には「子どもはママがいいに決まっている」と語った議員の発言が賛否を呼びました。「子育ては母」というのは科学的にはどうなのでしょうか。

池谷:科学的なことを言うと、やはり母です。哺乳類はほぼ例外なく、お母さんがおっぱいで子どもを育てる。人間だけ例外とは考えにくい。ただ、科学的に正しいことと、社会的に正しいことは意味が違います。今の社会では「母だけが育児」ではまずい。半々というのは相当難しいと思いますが、どちらかに偏らないようにバランスよく子育てすべきだと思います。

――原始時代と今は違う、と。

池谷:生物学的な正しさと社会的な正しさはまったく違う。人間は猿とはまったく違うわけですから、人間らしい正しさとはなんだろうかと思ったら、父親も育児参加することだと思います。せっかく準備されているのだからオキシトシンを使うといいと思いますよ。

 あと、そもそも「狩猟時代は母親が育児をしていた」というのは、少し違うのです。

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