特別対談企画「出口さんの学び舎」

2017年5月18日

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ライフネット生命会長・出口治明さんが「歴史」や「教養」をテーマに、さまざまな有識者をゲストに迎える対談企画「出口さんの学び舎」。技術革新やグローバル化により変化の激しい現代で、ぶれない軸を持って生きていくために必要なものとは何か、対話を通じ伝えていく――。

池谷裕二(脳科学者)×出口治明(ライフネット生命会長)
第1回 
人工知能に、人の真似をさせるのは間違っている
第2回 脳はじゃじゃ馬、多少くじ運が悪くても乗りこなすほうが面白い
第3回 
記憶力を鍛えるのは入力じゃなくて出力です
第4回 脳の中にはダークエネルギーがある



 

 

学習って、遺伝子からどれだけ自由になれるかという尺度なんです

出口:今の科学では、遺伝子が人間のいろいろなことを決めていきますが、先生の本を読んでいたら、“揺らぎ”がすごく大きいと書かれていました。

池谷:はい、そうです。

出口:遺伝子と人間の能力や個性の関係は、どう考えればいいですか。

池谷:私は、現状では遺伝の影響が大きいと思っています。まあ大ざっぱに言って半分くらいは。

出口:半分以上かもしれませんね。

池谷:教育レベルがものすごく上がってくると、元の遺伝子が効いてしまう、という言い方もできます。今までは、多少遺伝子のでこぼこがあっても、努力で補えた部分があるんです。努力する人が勝った。でも、仮に能力に天井があるとすると、効率よく努力できる時代になれば、いつでもみんなが天井まで行ける。そうすると、最初の下駄のところが重要になるんです。それが今後の問題かなと。

出口:社会が進歩したほうがむしろ、遺伝子に左右される地頭が効いちゃうってことですね。

池谷:おっしゃる通りです。今はまだ、多少勉強した人のほうが良い大学に入れますが、それでも結構遺伝子が決めています。学校教育もだいぶ成熟しはじめているということでしょう。

出口:なるほど。

池谷:どっちが幸せなんでしょう、努力が実る時代と遺伝子が重要な時代と。

出口:そこはすごく難しいところですねえ。揺らぎとの関係はどう考えたらいいんでしょうか。

 

池谷:揺らぎのパターンは、ある程度は遺伝で決まっています。遺伝子というのは持っているだけではダメ。使わなかったら持っていても無意味ですよね。遺伝子を使うか使わないか。エピジェネティクスという研究があるのですが、それを決めるのが経験や揺らぎなんです。

出口:遺伝子と揺らぎは、密接に関連しているということですね。

池谷:そうです。一方で面白いのは、僕らが揺らぎを使って学習しますね。なぜ学習するかというと、遺伝子で決まってしまっている基底の能力から、さらに向上するためです。向上しなかったら学習しても意味がない。というか、それは学習とは呼びません。つまり学習とは何かというと、「遺伝子なんてクソくらえ!」ってこと。遺伝子からどれだけ自由になれるかという尺度なんですね。だから、遺伝子と揺らぎというのは、お互いに影響を与え合って、手を取り合っているように見えて、ちょっと仲が悪いみたいな、そんな関係です。

出口:なるほど、そのように理解すればわかりやすいですね。揺らぎが遺伝子に影響を与えるということはあるんですか?

池谷:あります。揺らぎによって遺伝子の使われ方がかわります。まさに今わたしが研究しているテーマです。逆の影響もあります。デフォルトモードネットワークと言って、脳をMRIなどで撮りながら揺らぎのパターンを調べます。そうすると、「この揺らぎパターンを持っている人は、こういう遺伝子を持つ」と、完璧じゃないけれど、まあまあ一致するんですよ。

出口:揺らぎのパターンは、遺伝子から来るんですか?

池谷:はい。ある程度は遺伝子から来ています。他は、いろいろなことを経験し、それを取り込んで、揺らぎのバリエーションが出てきます。

出口:なるほど。

池谷:それでも、「この揺らぎパターンを持っている人は、この遺伝子」と、なぜわかるかというと、同じ経験をしても、取り込める人と取り込めない人がいるからです。あとは、経験しなかった人も取り込めない。なんとなく脳を見ても、生まれる前の遺伝子と関係があるんです。

出口:その揺らぎでもって、遺伝子に影響を与えるんですね。

池谷:そうなんです、そこに個性が生まれてくるんです。

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