ネット炎上のかけらを拾いに

2019年1月4日

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(wildpixel/Getty Images)

 笑って立ち上がらせるなら、せめてパイを投げ返させてくれ。

「女性差別もあったけど、『わたしは私』です」ってこと?

 西武・そごうといえば、2016年に放映された樹木希林出演のオリジナルムービーだ。「歳をとったら、歳相応の服を着なさいとか、妻や母親、祖母という役割に自分を合わせなさいとか、周りの人と同じように振る舞いなさいとか。そんな窮屈な常識は、もういらない」という力強いメッセージ。周囲との軋轢を避けようとすればするほど枠にはめられやすい日本社会の狭量さを鮮烈に描写してもいた。

 しかし同じ企業の広告が年始から炎上している。安藤サクラが出演する「わたしは、私」

 少し長くなるが、コピー全文を引用する。

=====
女だから、強要される。
女だから、無視される。
女だから、減点される。
女であることの生きづらさが報道され、そのたびに、「女の時代」は遠ざかる。

今年はいよいよ、時代が変わる。
本当ですか。期待していいのでしょうか。
活躍だ、進出だともてはやされるだけの「女の時代」なら、永久に来なくていいと私たちは思う。

時代の中心に、男も女もない。
わたしは、私に生まれたことを讃えたい。
来るべきなのは、一人ひとりがつくる、「私の時代」だ。
そうやって想像するだけで、ワクワクしませんか。

わたしは、私。
=====

 「女だから減点される」は、明らかに東京医大などの不正入試を意識したものだろう。「強要される」は、#metoo以降に告発が相次いだ「性的強要」を意味しているはずだ。「無視される」は具体的事例に悩むが、あえていえば「土俵から降りてください」の件で、女性の働きがさっくり無視されたことかもしれない。

 企業の広告で、性暴力をイメージさせる「強要」の言葉を使うのは、思い切った試みだと思う。広告において明るいエロは歓迎されても、性的強要はタブー中のタブーだからだ。また、ローラが「辺野古の海を守ろう!」と言えば政治的発言ダーっ!の大号令がかかる昨今において、財務省のセクハラや議員の関与も指摘されている不正入試を容易に推測させる言葉を入れたり、政府が推進する「女性活躍」に疑問を呈していくのは、それなりに覚悟のある態度ではないか。

 しかし、この広告は批判されている。理由は主に、コピーの後半部分と映像にある。

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