WEDGE REPORT

2019年2月5日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 監督する側であるはずの霞が関で、障がい者の偽装雇用が大量に行われていた─。

 実は、この事件が発覚する前に、以下で紹介する、自社内では仕事がないため、ハウス野菜の生産現場で障がい者に働いてもらい、企業としては障がい者雇用の受け皿を確保するというモデルについて、厚生労働省に意見を求めたことがある。すると、障がい者雇用の元締めである障害者雇用対策課の担当者からこのようなコメントが返ってきた。

船橋市の「わーくはぴねす農園」。じっくりと野菜と向き合う姿が印象的。エスプールプラスを誘致した愛知県豊明市の小浮正典市長は「雇用率を達成したい企業と障がい者の就労ニーズをマッチさせた事業」と評価する。(WEDGE)

 「障がい者の雇用の場はあくまで、その企業の中で見つけてほしい。障がい者の雇用を進めるための仕事をサポートする制度などもあるので、こうした制度を活用して、企業や工場の中で働ける場を見つけるのが望ましい」として、社外の自社から離れたところで雇用する形態をあまり評価はしていないようだった。

 しかし、足元では仕事をつくる努力さえ放棄した揚げ句、障がい者の雇用数を水増ししていたのである。矯正視力ではなく、裸眼視力で健常者を障がい者とカウントするなど、ずさんな算定方法が目立った。これにより、本来雇われるべき障がい者の雇用の場を長年にわたり奪ってきたことになり、中央官庁の罪は大きいと言わざるを得ない。

 いま、障がい者雇用の現場で求められているのは、厚労省が言ったような建前論ではなく、労使ともにウィン・ウィンとなるような職場づくりにあるはずだ。そのような実質的な障がい者雇用の場をつくっている企業の現場をリポートする。

 障がい者に働いてもらう場を見つけられなくて困っている企業に対して、各々の企業の外で働く場所を提供するビジネスを展開している会社がある。人材派遣のエスプールの子会社エスプールプラス(東京都千代田区)だ。

 例えば、就労経験がない重度の知的障がい者。こうした人の場合、既存の職場内に働いてもらう場所を確保することは容易ではない。エスプールでは、そうした問題に悩む企業から、自社で運営する野菜のビニールハウスでの作業者として、障がい者を受け入れている。障がい者を雇用する企業はエスプールに農園の利用料などを支払うという仕組みだ。

 船橋市にある野菜栽培のビニールハウス「わーくはぴねす農園」を訪問すると、30メートルほどのレーン(畝)ごとに、エスプールと契約した企業の区画に分かれていた。各企業に雇用されている障がい者は、それぞれ自社のレーンでじっくりと野菜に向き合っていた。軽石が敷き詰めてある土壌で、養液栽培のため、土で手が汚れずに作業をすることができる。この一つの畝を使って3人一組の障がい者に1人の監督者が付いたチームが野菜などを育てている。できた野菜は外部に販売はしていないが、ノルマはなくストレスを感じることなく作業ができるためか、笑顔が多く見られた。

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