オトナの教養 週末の一冊

2019年1月25日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――密漁に対し、警察や海上保安庁の動きは?

鈴木:警察も海上保安庁も密漁を摘発しようと動いていますが、海上保安庁のほうがより慎重に捜査を進めていますね。

 警察の場合、福岡県の大牟田署に全国で唯一の密漁係が設置されていますが、それ以外は海だけを専門にしているわけではありませんから、海や船の専門用語がわからない。たとえば、船尾を「トモ」と呼んだりですね。

 一方の海上保安庁は、職員全員が5年以上船での勤務を行う、海のプロ集団です。 

 また、警察は密漁者を検挙後、取り調べを通じて捜査を広げていくのが基本ですが、海上保安庁は現行犯逮捕を基本としています。ですから、内偵に相当な時間を費やし、慎重に進めます。

――警察も海上保安庁も今後密漁摘発に力を入れていこうとしているのでしょうか?

鈴木:警察も海上保安庁も世論をすごく気にします。昨年、北海道警は密漁取り締まり年間でした。なぜかと思っていたら年末に漁業法の改正があったからです。それほど世論を気にするということです。今後、世論が密漁に厳しくなれば、さらに力を入れていくでしょう。

――6年間の取材中に苦労した点はどんなところでしょうか?

鈴木:正直に言えば、密漁団の密漁に同行できれば良いですけど、それはできない。たとえば、覚醒剤売買の現場に同行し、摘発されたらどうするのか、ということです。そこが悩ましところです。

 今回の取材に限らず、暴力団の取材をする際には「所詮、お前はマスコミだ」「仁義がない」「外道だ」と言われ続けなければならないんです。もし良い人などと言われれば、不都合な真実を書くことはできませんから。

――ノンフィクションの本が売れないと言われる時代に鈴木さんの本は評価され、売れます。理由についてどうお考えですか?

鈴木:今回の本に関しては、売れるかどうかはわからないけど、原稿を書いている段階で評価されるのではないかと思っていました。本を読むと、多かれ少なかれ大抵どこかで読んだり、聞いたりしたことが書いてある。でも、今回の本は初めて読むことばかりだと思うんですよ。

 私の信念として、ノンフィクションを書く上で事実を箇条書きにしても絶対に人は読んでくれないと思っていて、読んでもらうためには一つ一つの事実をストーリーにし、全体がひとつのストーリーにならなければ人の心に届かないと考えています。

 悪というのは、戦争現場へ取材に行かなくても、日常生活のなかに潜んでいるし、我々も関わっている。普段、本を読まないような人でもそういうことをこの本から読み取ってもらえると嬉しいですね。

  
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