WEDGE REPORT

2015年9月16日

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 8月31日から9月3日にかけて、「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)北小委員会」が北海道札幌市で開催された。WCPFCは、北太平洋のマグロ資源を管理する国際委員会。絶滅が危惧される太平洋クロマグロについて、米国が踏み込んだ漁獲規制を採用するよう提案したが、日本政府を代表して交渉に臨んだ水産庁は頑強にこれを拒否。緊急ルールの策定を来年まで引き伸ばすことが決まった。

絶滅が危惧されている太平洋クロマグロ (写真:小平尚典)

 日本は世界最大のマグロ消費国かつ漁獲国であり、国際機関の要職にも水産庁の役人を送り込むことができるほど力を持っているので、日本の主張は通りやすい。しかし心配なのは、太平洋クロマグロの資源量である。国際的な科学評価によれば、現在、初期資源量(人間が漁をしていなかった時代の資源量)の3.6%という「歴史的最低水準」である。2014年11月には、国際自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧種に指定したほどだ。

零細漁師と大型巻き網漁業の対立

 興味深いのは、国内漁業者の間に、根深い対立が発生する事態に及んでいることだ。それは家族経営的な零細の漁師が多い沿岸漁業者と、日本水産やマルハニチロなど大手資本が運営する巻き網漁業者の対立だ。前者は禁漁を決断し、後者は産卵期の巻き網漁業をやめようとしない。

 「堪忍袋の緒が切れたんです」。6月10日、対馬の沿岸漁業者がもつ漁船が、入港してきた巻き網漁船を取り囲んだ。沿岸漁業者が抗議のために出した漁船はなんと102隻にも及ぶ。その2日後にも、74隻で巻き網漁船を取り囲む事態が発生した。

 対馬の沿岸部には太平洋クロマグロ(以下、クロマグロ)の養殖場が点在する。対馬沖にヨコワ(クロマグロの幼魚)が出現するこの時期、漁獲したヨコワを養殖場へ入れるため、巻き網漁船が入港してくる。

対馬で巻き網漁業(右)を取り囲んだ沿岸漁業者の漁船 (写真:森山淳)
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 対馬では、収入の9割がクロマグロ、という漁業者も多いという。こうした沿岸漁業者にとって、全国的に知られる青森県の大間1年分以上のクロマグロを、わずか1日で水揚げする能力をもつ大型巻き網漁業は脅威だ。

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