WEDGE REPORT

2015年9月16日

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 「巻き網漁船が通ったあとは、海がカラカラになり、しばらく漁ができなくなるのです。せめてヨコワが対馬海峡を通過する5~6月と、日本海から戻ってくる11~12月の操業は勘弁してくれと昨年9月に要望書を出したんです」。対馬市曳縄漁業連絡協議会の梅野萬寿男会長はそう話す。今年、対馬と壱岐の漁業者は、6~7月の産卵期の禁漁を決めた。クロマグロはこの時期、日本海で卵を産む。もちろん収入は減るが資源の持続性を維持するためには仕方ない措置と考えてのことだ。しかし、巻き網漁業の側は、禁漁する気などさらさらない。

 「彼らは無反応なばかりでなく、私たちの仲間が海上に設置しておいた『シイラ漬け』という竹でつくった仕掛けごと巻く事態も発生した。こうした状況が続くようでは、もう私たちはこの島で生活することができなくなると、抗議船を出したんです」

 結局、8月末に日本遠洋旋網(まきあみ)漁業協同組合との話し合いが行われることになったが、あくまで話し合いの場が用意されたに過ぎず、根本的な解決はされていない。

 「魚が大量にいた時代は巻き網漁船が巻いても誰も文句は言わなかった。今はそういう状況じゃない。何もかもやめろとは言っていない。こちらにも生活があるので、せめてこの時期の漁だけは自粛してもらいたいという話だ」(対馬の漁業者・宮﨑義則氏)。

聞き慣れぬシュプレヒコール

 「巻き網やめろー」、「産卵期のクロマグロを獲るなー」、「水産庁は資源管理をしっかりやれー」

 8月3日。昼下がりの都心で聞き慣れないシュプレヒコールが鳴り響いた。「クロマグロの資源悪化と水産庁の無策に、いてもたってもいられなくなったんです」。デモを企画した茂木陽一氏は釣り業界ではよく知られた存在で、多くの釣り人がデモに参加した。

8月3日に行われた釣り人らによるデモ (写真:Wedge)

 「参加者は、国内のみならず、海外でも釣りを行っている人が多く、魚の減少と水産庁の資源管理の甘さを肌で感じています」。このデモには、全国各地から90人ほどが参加。本業は水産業とは関係のない一般企業のサラリーマンが大半で、弁護士や医師、主婦も参加していた。

 デモ隊は水産庁と、産卵期に巻き網漁船でクロマグロを漁獲する共和水産の親会社・日本水産の本社前を通り、道行く人にビラを配った。また、農林水産大臣、水産庁長官、日本水産社長ら宛に、13279人分の署名を渡した。こうしたデモだけでなく日本水産に対しては、一部で不買運動まで発生する事態に発展している。

 多くの漁業者が、現在水産庁が行っているクロマグロの規制について、「絶滅懸念を払拭するだけの納得感が薄い」と話す。「目の前にある魚は獲る」習性をもつ漁師が、自ら禁漁をするとは異常事態ともいえる。それでも水産庁の腰が重いのは、巻き網漁業の目の前の利益を守らなければならない特別な事情でもあるからだろうか。

 Wedge編集部では、巻き網漁業者の代表として、日本水産と山陰旋網漁業協同組合に対しインタビューを申し込んだ。  

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