赤坂英一の野球丸

2019年2月13日

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 今年も2月1日から始まったプロ野球キャンプ、最も大きな〝異変〟は11日まで宮崎で練習していた巨人の大盛況である。私は1989年から巨人キャンプの取材を始めて約30年になるが、連日これほどたくさんのファンが詰めかけたのは〝超久しぶり〟だった。宮崎県運動総合公園・サンマリンスタジアム宮崎を使用し始めた2001年以降に限ると、この18年間で一番のにぎわいだったと言ってもいいかもしれない。

(stock_art/gettyimages)

 なにしろ、初日が1万2000人、2日の土曜が1万8000人、3日の日曜が2万人と3日間の合計が5万人。これに対して、同じ宮崎市の生目の杜運動公園・アイビースタジアムでキャンプを行っているソフトバンクは初日が7500人、2日目が1万5700人、3日目が1万9100人と、いずれも巨人を下回って合計4万2300人。このうち2日目は2万1700人に上方修正され、この日だけは巨人を上回ったことになっているが、それでも3日間のトータルでは4万6300人どまりと、ソフトバンクが巨人の後塵を拝しているのだ。

 前身のダイエー時代から宮崎でキャンプを始めた03年以降、観客動員数はソフトバンクがダントツのトップだった。それがなぜ、16年目にして巨人に逆転されたのか。知り合いの球団関係者や地元福岡のマスコミ関係者は「やはり、巨人のイメージが大きく変わったことが大きいのだろう」と分析している。

 巨人は原辰徳監督が復帰して、丸佳浩(前広島)、炭谷銀仁朗(前西武)をFAで獲得、新コーチも多数入団するなどチームの顔ぶれが一新された。「これだけ高橋(由伸)監督時代からガラリと変われば、ファンとしてはとりあえず見てみようかという気になる」とソフトバンク関係者はいうのだ。

 それに引き換え、ホークスの新戦力は新人投手・甲斐野央(ドラフト1位、東洋大)、板東湧梧=同4位、JR東日本)らが目立っているぐらい。工藤公康監督以下首脳陣もほぼ同じと、巨人に比べれば新味に欠ける。

 私は毎年、巨人とソフトバンクのキャンプを取材しており、今年も2日ずつ見て回った。昨年までは、巨人の人気について何かと批判的な記事を書いたことも少なくない。そんな私の目から見ても、巨人の活況ぶりはソフトバンクを上回っているように思う。ただ単にお客さんの人数が増えただけでなく、練習中にスタンドから歓声や笑い声が沸き起こるのだ。去年までだったら考えられなかった現象である。

 その最大の〝功労者〟は、原監督なのか、丸なのか。球団やチームの関係者に聞くと、意外にも「人間じゃなくて施設だよ」と指摘する声が多かった。巨人が総工費1億6500万円をかけて新設したブルペンとサブグラウンドがそれだ。この両方がサンマリンスタジアムのすぐ目の前にできたおかげで、一軍の全選手が球場とその周辺で練習をすることが可能になったのである。

 選手は球場とブルペンやサブグラウンドの間を徒歩で移動するから、ファンにとってはあらゆる選手が間近に見られて、写真撮影もできる。ケースバイケース、及び個々の選手にもよるが、ときには立ち止まってサインもしてくれる。そうした評判がSNSで拡散し、ファンの増加につながったようだ。

 新ブルペンがなかった昨年まで、投手陣は球場でのウォーミングアップを終えると、約2キロ離れた室内練習場の木の花(このはな)ドームとその隣のブルペンにマイクロバスで移動しなければならなかった。木の花ドームも完成した04年当時は最新鋭の木造ドームと評判を取ったが、いかんせん球場から遠いのが難点。「バスを待ってる間にアップした身体が冷えてしまうよ」と苦情をこぼす投手も多かった。

 それだけブルペンが遠いと、ファンも移動するのに一苦労だった。約2キロは大人の足でも20~30分はかかるし、子供を歩かせられる距離ではない。そこで巨人は地元の宮崎交通に協力を仰ぎ、球場と木の花ドームを行き来する運賃無料のシャトルバスを運行していたが、いかんせん便数が限られているから、お目当ての投手が投げているときにブルペンに行けるとは限らない。

 ついでに書くと、報道陣も毎日投球練習が始まるたびにレンタカーでブルペンまで移動しなければならなかった。いちいちタクシーに利用し、経費で落としていた評論家もいる。私自身は、経費節減と自分のエクササイズも兼ねて、もっぱら徒歩か自転車を使っていた。

 このように、新ブルペンは投手、ファン、マスコミとすべての悩みを解消し、キャンプを盛り上げるのに大いに貢献しているのだ。今回の巨人の〝大英断〟には、改めて拍手を送りたい。同じ宮崎でキャンプを行っているソフトバンク、広島、オリックスではかなり前から常識化していたことであってもだ。

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