WEDGE REPORT

2019年2月16日

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 日本のコメ生産は、国が主導して生産量を抑制する生産調整が長年続いたため、反当たりの収量(反収)が低い。中国では、反収の高いF1(雑種第一代)の種が普及していて、収量は日本の1.3~1.4倍ほどあるという。収量の面では日本の稲作が大きく引き離されている一方、技術指導で中国の大規模生産の現場で引っ張りだこの農家が、新潟県加茂市にいる。数千ヘクタールの技術指導に関わる石附健一さん(株式会社ライスグローワーズ)に、なぜ日本の技術が重んじられるのか聞いた。

黒竜江省での田植え(2018年、石附さん提供)

中国の今の稲作の基礎をつくったのは日本人

―― 中国に関わるようになったのはいつ頃 

 私が最初に中国を訪れたのは1982年。中国の今の稲作の形態をつくったと言われているのは、日本の稲作の普及員。北海道の原正市さんと、岩手の藤原長作さんで、二人が寒冷地での稲作を飛躍的に伸ばした話は、中国では超有名。この方々は70年代末から80年代にかけて中国の東北部に入って、稲作を指導した。

 高粱やトウモロコシ、ジャガイモよりも、コメの方が生産効率も、エネルギー取得の効率もいい。そしてもちろん、コメを作った方が農家は稼げる。そのため、稲作が飛躍的に伸びた。私は当時、父と一緒に、自費で中国に渡って指導していた。当時の中国はお金がなかったから。

―― 今と昔では水田は変化している

 昔と全然違ってきている。かつては「勘弁してくれ」と思うような田んぼに連れていかれて、「これを何とかしろ」と言われることがあった。田んぼの端がまっすぐでないような、土地改良のされていないところが多かった。中国の稲作というのは、まだまだ未開な分野で、いまだにびっくりすることも多い。いつ良くなるんだろうと思う。ただ、前に進んでいるのは確か。

黒竜江省方正県にある稲作博物館では藤原長作さんの功績を顕彰(石附さん提供)

 指導しているのは、黒竜江省、吉林省、浙江省、江西省。中国の昔の大型農場というのは、どこかの行政区の飛び地か、刑務所か軍の関係する土地が多い。我々は、たとえば上海市が浙江省に持っている飛び地といったところから、指導に呼ばれる。大型農場だと、ドローンが飛んでいたり、田植えをしない直播がされていたりと、先進的な技術が取り入れられている。

日本式の栽培で地域一の収量達成

石附健一さん

 今、黒竜江省チチハルの北にある甘南という、もともと日本人が開拓した場所に入っている。この場所にかかわって2年がたって、昨年の春に日本式の植え方を40ヘクタールほど指導した。現地の人がやってくれたのは、私のやりたかった植え方の半分くらいの精度だったけれども、その地域で一番の生産量を達成した。一般的にアジア圏の稲作は、種もみをたくさん入れて、肥料をいっぱい入れれば取れるというふうな、科学に基づいて稲を見ていない作り方がかなり多い。中国も同じ。

 我々がモデルを示し、いずれはその技術を水平展開していく。そのために、甘南では我々も出資して合資会社を作って、自社農場を徐々に広げる。管理をするのは現地の作業者で、私は一度、作り方を実演して見せて、「あなたたちがやるのを私が監修する」という立場。

 日ごろの管理は、画像で送られてきたりするので、それを見て指示を出す。時々現地を2日ほど訪れて、教えた通りに作っているか確認して指導する。大きい農場なら、10日に1回くらいの頻度で生育調査をしてデータを送ってきたり。農場の規模と作業者によって、管理の方法はそれぞれ。

 江西省の省都の南昌で、今は1枚2反(20アール)以下の田んぼを1ヘクタールちょっとにする事業にもかかわっている。6000ヘクタールくらいを基盤整備する予定。

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