WEDGE REPORT

2018年8月28日

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山口亮子 (やまぐち・りょうこ)

ジャーナリスト

2010年京都大学文学部卒業、2013年北京大学歴史学系大学院修了、時事通信社を経て16年よりフリージャーナリストとして活動。

 高齢化率が46%もの高さながら、新しい挑戦を次々と打ち出し、注目されている広島県の神石高原町。チャレンジを支える町の理念と、最新の取り組みを紹介したい。

左から、PWJの大西氏、神石高原町長の入江氏、慶應大特任教授の南氏

 「高齢化率46%の町で、事業を立ち上げる人に資金的支援と、経営上のサポートをするという基金の募集に計8件、総額1億5300万円分の事業の申し込みがあったんです。うち3件に計約3000万円の支援をすることになりました」

 井上義雄さんが興奮気味に説明する。この基金は、地域に新しいビジネスチャンスを作り出すことを掲げて設置された。井上さんは基金の理事を務めている。

 神石高原町は、広島県東部の中山間地に位置する。高速道路も鉄道も通っておらず、高校に進学する段階で4割が町外に出てしまう町……というと、多くの人が過疎高齢化で疲弊しているイメージを持つだろう。しかし、そんな町が今、さまざまな話題の発信源になっている。井上さんたちが運営する「神石高原地域創造チャレンジ基金」もその一つだ。

 「補助金・助成金は出したら出しっぱなし。そうではなく、事業者には5年程度をめどに貸した資金を返してくださいと言っています。返ってくるお金をまた地域に再投資する」(井上さん)

工場誘致の基金を有効活用

 支援の決まった事業は、地元の銘柄牛である「神石牛」の飼育頭数を増やす、町の農産物の特産品を作る、自然エネルギーの地産地消を目指すなど。資金面の支援をしつつ、経営サポートもして、自立的な経営を可能にし、事業を拡大するという正の循環を生もうとしている。「3000万円を呼び水に、1億円くらいの外部資金を呼び込めるようにしたい」と井上さん。

 基金の原資になっているのは、町が工場誘致のために積み立ててきた基金。現在活用されていないこの基金を、有効活用しようと、チャレンジ基金を昨年9月に創設し、11月に応募を開始した。

ティアガルテン内に作られたカフェ&ショップの「マルクトプラッツ」で売られる鹿肉ドックフード

 若者のビジネスチャレンジを応援しようと作られた基金の募集に、想像以上の応募があった。今年7月には第2回の募集を始めている。一度貸し付けた資金を償還し、再度支援に回すことで、資金が地域をめぐることになる。今後毎年、事業の募集をする予定で「町外の人でも、町の資源を使う事業なら応募ができる」と基金の代表理事の上山実さんは言う。

 町のチャレンジは、これだけではない。井上さんと上山さんを取材した場所は、体験型観光施設「神石高原ティアガルテン」のカフェ。ここはNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)が創設に関わっている。

 元は町有地で、もともと公園であまり利用されていなかったのを、2015年に体験型観光施設にリニューアルした。PWJでは、犬の殺処分ゼロを掲げて活動する「ピースワンコ・ジャパン」プロジェクトを立ち上げ、ティアガルデンに保護施設やドッグラン、動物と触れ合える体験施設などを整備している。

 取材時には、スリランカから8人が研修に訪れていた。現地で観光型の牧場を整備する話があり、仕組みを学びに来たという。神石高原ティアガルテンは、年に10万人が訪れる町を代表する交流の拠点になっている。町はPWJと協力して広島県内の犬の殺処分ゼロを目指す事業も手掛けている。

ピースワンコ・ジャパンの犬舎

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