Washington Files

2019年3月25日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 トランプ・ホワイトハウスが秘密裡に進めてきた対サウジアラビア原発供与計画内容の一部がこのほど、内部告発で発覚、米下院監査・改革委員会(エリジャ・カミング委員長)が「原子力エネルギー法」抵触の疑いがあるとして真相解明に乗り出した。

 計画では数十基の売却が見込まれており、もしこれが実行に移された場合、サウジは敵対関係にあるイランに続き核開発への転用に乗り出すことも懸念され、最悪の場合、中東での核拡散に発展しかねない危険をはらんでいる。

 カミングズ委員長は去る2月19日、ホワイトハウスが政権発足後の2017年初めからひそかに着手してきたサウジアラビアへの原子力技術供与計画について、「複数の内部告発者」の情報提供を下に作成したという報告書要約版を公表した。

(Martin Janecek/Gettyimages)

 その中で以下のような点が明らかにされた:

  1. 「内部告発者たち」はこのほど当委員会に対し、ホワイトハウス関係者たちが法律に抵触する恐れがあるにもかかわらず、サウジへの原子力技術移転計画を大急ぎで推進しようとしていることに対し重大な懸念を表明するとともに、計画をめぐりホワイトハウス内部での主導権争いなど、当事者間で混乱状態に陥っていることを警告してきた。
  2. 良識派の倫理問題担当顧問たちはトランプ政権の「高官たち」に対し、サウジとのこうした取引は、外国への原子力技術移転に際し議会の事前承認が必要であるとして繰り返し注意喚起してきたが、彼らはこれを無視してきた。
  3. 同計画の推進母体となっているのが、サウジ国内における原発建設を請け負う複数の大手企業からなる「IP3インタナショナル」コンソーシアムであり、2016年米大統領選挙期間中に国家安全保障問題顧問を務めトランプ当選後も大統領顧問だったマイケル・フリン氏が中心的役割を担ってきた。
  4. 2017年1月から同年7月までホワイトハウス国家安全保障会議中東北アフリカ担当上級部長だったデレク・ハーベイ氏はトランプ政権発足直後に関係スタッフたちに対し、「IP3原子力計画」はマーシャル・プランの中東版であり、フリン大統領補佐官がすでにサウジへの売却を決定済みであることを告げた。
  5. フリン氏はその後、大統領の署名を得るための「閣議メモ」を作成、その中で、大統領の永年の親友で2017年1月「大統領就任式実行委員長」の要職を務めたトーマス・バラク氏を計画推進責任者に指名した。
  6. 大統領は今年2月12日、サウジアラビアなど中東数カ国の原発建設会社代表をホワイトハウスに招き会談したほか、娘婿のジャレッド・クシュナー上級顧問をサウジに派遣するなど、その後も同計画は進行中とみられる。

 これらの指摘のうち特に注目されるのは、クシュナー氏の最近の動きだ。

 同報告書が言及した通り、クシュナー氏は今月初め、サウジの首都リアドを訪問、かねてから親交のあるサルマン国王、皇太子ら同国王室トップと会談した。しかし、電子メディア「Daily Beast」などによると、この会談について現地米国大使館は一切知らされておらず、大使も会談には同席を許されなかった。

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