Washington Files

2019年3月18日

»著者プロフィール
著者
閉じる

斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 米上院本会議が、壁建設推進のために発令されたトランプ大統領の「国家非常事態宣言」を無効とする決議案を多数で可決した同じ日の14日朝、「トランプ再選阻止」と「壁建設反対」をスローガンに掲げる民主党のベト・オルーク前下院議員(46)が2020年大統領選への正式立候補を表明した。米マスコミは早くも、民主党候補間の指名争いとともに、二人の今後の選挙戦での攻防に異常なほどの関心を示し始めている。

アイオワ州のコーヒーハウスで支持者と対話するオルーク氏(REUTERS/AFLO)

 トランプ大統領とオルーク氏は、去る2月11日にも、メキシコと国境を接するオルーク氏の出身地テキサス州エルパソ市内の近接した二つの会場で、壁建設をめぐり賛否両論の大演説集会を開いたばかりだった。

 今回、同じ日に期せずして再び二人に全米メディアの大きな関心が集まったことは、来年の大統領選挙に向けて“因縁の対決”を暗示したものとの見方も出ている。

 実際、オルーク氏はこれまですでに立候補を表明または、近く表明がうわさされる他の多くの民主党候補の中で「最も大統領に成りうる候補most electable presidential candidate」との前評判もあり、再選を狙うトランプ氏にとっては最も手ごわい挑戦者になる可能性を秘めている。

 ではなぜ、アメリカの主要メディアが、立候補正式表明のかなり以前からオルーク氏の一挙手一投足に注目してきたのか、そのポテンシャルについて改めて重要ないくつかのポイントを以下に整理してみよう。

カリスマ性

 194センチの長身、ハンサムで端正な顔つきながら時として激しい闘志をみなぎらせるまなざし、自然に聴衆をひきつける静かな語り口などは、他の民主党候補も一目置くほどの強味とされている。昨年11月中間選挙の際も、共和党の牙城ともいわれる地元テキサスから上院選に出馬、結果的に現職のテッド・クルーズ氏相手に接戦で敗れたものの、西部、中西部など他州からも大勢の若者たちが選挙運動にかけつけるなど注目を集めた。

 先月、エルパソで開いた集会は、トランプ大統領が壁建設を訴えるイベントを同市スポーツ・アリナの大会場で行うことが分かった後、これに対抗するために同じ時間帯に急遽、ネットなどを通じて若者を中心とした市民に参加を呼び掛けたものだった。

 大統領選立候補表明前にもかかわらず、結果的に州外からも含め1万人以上の熱心な聴衆がにわか仕立ての草野球場空き地の会場に詰めかけ、取材に集まった報道陣もYuTubeなどソーシャル・メディア含め、オルーク氏のスピーチ内容を実況中継するなど、西部劇に見立てた「エルパソの対決」として大きな関心を集めた。結局終わってみると、トランプ大統領の演説会場入場者は1万人にも達しなかった。

 昨年、クルーズ氏の再選本部戦略部長を務めたジェフ・ロウ氏も「彼ほどのカリスマ性を持った候補は他にいない」と評価している。

 こうしたオルーク氏の持つカリスマ性について、ブルームバーグ通信は「人に影響を与えるには3つの方法しかない。すなわちパワーか理性か魅力だ。このうちパワーと理性にはある程度の合理性がともなうが、われわれがカリスマ性を持った指導者に魅せられた場合には、理屈抜きで彼に従う。それゆえに精神とか道徳ではなく魅力こそが指導者としての成功の理由となる」との著名な心理学者の言葉を引用しながら、彼の人を引き付ける潜在力についての解説記事まで流した。

関連記事

新着記事

»もっと見る