Washington Files

2019年3月18日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

庶民性

 14日、仰々しい大演説会場ではなく、自宅の茶の間に夫婦で座り普段着姿のさりげないビデオ・メッセージを通じ大統領選立候補を正式表明したオルーク氏だったが、同日朝には、来年大統領選で全米50州のうち最初の党員集会が開かれる中西部アイオワ州の田舎町に自ら運転するワゴン車で乗りつけ、小さなコーヒーハウスに詰めかけた労働者や主婦たちを前にジーンズに腕まくりしたYシャツ姿で椅子の上に立ったまま「トランプ政権の下で分断状態にある国の再統一の重要性」などについて有権者に立候補をアピールした。

 下院議員だった昨年冬、地元選挙区からワシントンに戻る予定だった飛行便が天候悪化でキャンセルになったため、2000キロ近くの距離をレンタカーで昼夜をかけて走り続け、連邦議会の審議にかけつけた。その際、同じテキサス州出身ながら政治的立場を異にする共和党の同僚議員にも声をかけ、車内で政局談義に興じたというエピソードは有名だ。

新鮮さ

 バーニー・サンダース(77)、エリザベス・ウォーレン(69)、カマラ・ハリス(54)、コリー・ブッカー(49)、エイミー・クロブチャー(58)各氏らすでに出馬を表明済みの各候補がいずれも現役上院議員として連邦議会でそれぞれ実績を積み上げてきているのに対し、オルーク氏は下院議員を3期務めたにすぎず、ワシントン政界での存在感はほとんどないに等しい。しかし、かえってそれが、全米各地の有権者たちにとっては「政治プロの洗礼を受けていない新星」として歓迎材料に十分なりうる。

 ジミー・カーター(民主)、ロナルド・レーガン(共和)、ビル・クリントン(民主)、ジョージ・W・ブッシュ歴代大統領はいずれも州知事経験者であり、ワシントンでの政治経験は皆無だった。トランプ大統領もニューヨークに拠点を置いた実業家出身であり、ホワイトハウス入りしてからも今日に至るまで自ら「アンチ・ワシントン」のスタンスを取り続けることで地方の保守支持基盤をなんとかつなぎとめている。

若さ

ベビー・ブマー世代に次いで1960年代初めから1970年代に生まれた「ジェネレーションX」と呼ばれる世代に属するだけに、大学生から中堅ビジネスマンにいたるまで男女を問わずヤング層の間で絶大な人気を集める。すでに全米の主な大学100校では「Students for Beto」と呼ばれる学生組織が結成され、その数は増えつつある。

 2018年上院選でオルーク氏に投票した有権者のうち48%が45歳以下だったとされ、通常の連邦議会選挙における同年齢層の平均支持率(38%)を大きく上回っている。また、18歳から34歳までの有権者の間ではオルーク支持者が61%だったのに対し、クルーズ支持者は23%にとどまった。

 予備選を含め1年半以上の長期戦を通じ、全米50州のうち多くの州でどれだけ頻繁に遊説をこなせるかが重要なカギとなるが、その行動力においても、各候補の中で最年少のオルーク氏は2012、2014、2016各年の下院選挙戦で、各地区の数万軒の家庭を徒歩で訪問、投票を呼びかけるなど、その粘り強さは実証済みだ。

 2018年上院選では、テキサス州の254あるすべての郡を訪問、十数人規模の対話集会を数多くこなしたことも語り草となっている。

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