オトナの教養 週末の一冊

2019年3月29日

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東嶋和子 (とうじま・わこ)

科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師

元読売新聞科学部記者。フリーランスで環境・エネルギー、医療、生命科学、科学技術分野を中心に、科学と社会のかかわりを取材。主著に『名医が答える「55歳からの健康力」』(文藝春秋)、『人体再生に挑む』(講談社)など。新著に『水も過ぎれば毒になる 新・養生訓』(文春文庫)

 このところ、日本列島は「平成」というひとつの時代の終わりに感慨しきりである。しかし、世界はそんな区切りにおかまいなしに、21世紀の行きつく先にどんな未来が待ち受けているかの議論に忙しい。まるで、過去を振り返っている暇などないというかのようだ。実際、21世紀に入ってからの科学技術の進歩のスピードは、専門家でもしがみつくのがやっとなのだから。

 本欄でご紹介した『サイエンス・インポッシブル』や『ホモ・デウス』のように、科学やテクノロジーの進歩によって私たちの社会や暮らしがどう変わるかを、科学者や歴史家が論じた本が話題になっているのも、未来に対する漠とした不安の裏返しかもしれない。

(metamorworks/iStock/Getty Images Plus)

 本書も同様に、5年後、10年後、あるいは私たちの世代をはるかに超える遠い未来にどんな科学の進歩が待ち受けているかを予測するものである。

 ただ、これまでと違うのは、各分野の専門家18名が1章ずつを担当し、それぞれが思い描く未来を短いエッセイや論文にまとめている点。イギリスの物理学者で作家、キャスターでもあるジム・アル=カリーリが編んでいる。

 本書の紹介によると、ジム・アル=カリーリは現在、サリー大学の理論物理学教授および「科学への市民参加活動」の議長を務める。核物理学と量子生物学にかかわる作家活動と研究のほか、テレビやラジオの科学番組の案内役もこなしてきたという。王立協会のマイケル・ファラデー賞に加え、2016年には科学コミュニケーションにおける功績が認められ、スティーブン・ホーキング・メダル創設後初の受賞者となった。

人間と動物の共存についての現実的な解を模索する

 さて、本書の構成は「地球の未来」、「人類の未来」、「オンラインの未来」、「未来をつくる」、「遠い未来」の5部、18章から成っており、未来を予測するに十分な幅広い分野が網羅されている。

 トピックの一部を挙げれば、気候変動、ゲノム編集、DNAメモリ、合成生物学、トランスヒューマニズム、人工知能(AI)、量子コンピュータ、モノのインターネット(IoT)、ロボット、スマート・マテリアル、エネルギー、宇宙移民、人類滅亡、テレポーテーション、タイムトラベルなど。どれも進歩が著しく、注目されている分野ばかりだ。

 著者によって文章のスタイルも、未来へのまなざしも異なるので、始めから通して読んでも目先が変わって飽きないし、また、興味のある分野に絞って意見の異なる著者の考えを読むのも面白い。

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