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2019年3月31日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 北方領土の「2島返還」への方針転換が無駄、無益な譲歩であったことがいよいよ鮮明になった。ロシアのガルージン駐日大使は3月28日に東京・内幸町の日本記者クラブで行った会見で、これについて一顧だにしない冷淡な態度を示した。

 「歯舞」「色丹」の2島を平和条約締結後に実際に引き渡すかについても言葉を濁した。「4島返還」という一貫した要求を事実上放擲することで領土問題の決着をめざした日本政府の狙いは潰えた。「4島」はおろか「2島」返還も従来よりむずかしくなったとみるべきだろう。

(laymul/gettyimages)

「引き渡しは〝善意〟」

 ガルージン大使は、日本政府のあらたな方針「2島+アルファ」に対する受け止め方について、「ロシア側はそういう表現を使ったことはない。日本側が時々使っている。どう解釈すればいいかコメントするつもりはない」と無関心、冷淡な姿勢をみせた。

 1956(昭和31)年の日ソ共同宣言にもとづいて、平和条約が締結された後に、歯舞、色丹の返還に本当に応じるかについて念を押され、「ソ連は、日本の利益を考慮して引き渡すつもりだった。善意であったことを理解してほしい」と述べるにとどめた。「プーチン大統領、ラブロフ外相は〝引き渡し〟という表現を用いている」とも述べ、これら諸島の主権がロシアにあるとの見解を暗に強調した

 「歯舞、色丹島にはロシア軍以外のいかなる軍隊の駐留も受け入れるものではない」として、返還後に日米安全保障条約が適用されて米軍が駐留することへの懸念も示した。

 領土問題を伴う平和条約交渉についてはプーチン大統領が3月15日、ロシア紙「コメルサント」のインタビューで「勢いが失われた」「まず日本が米国との(安保)条約を離脱しなければならない」と強調、北方領土への米軍駐留の可能性除去が交渉の前提との見解を示している。

 プーチン大統領は2016年12月、東京での安倍首相との会談後の記者会見で、同様の見方を示しており、ロシアにとっては従来からの懸念ではある。しかし、日本が2島返還に舵を切って妥結機運を盛り上げている時期にふたたび、この問題を前面に押し出してくるのは、状況に応じて交渉のハードルをあげる旧ソ連の手法そのままにもみえる。

 大使発言はもちろん、プーチン大統領の見解に従ったのものではあるが、一連の発言によって日本のめざした「2島+アルファ」は〝止め〟をさされたというべきだろう。

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