2024年12月30日(月)

【中学受験】成功を導く父親の役割

2019年4月18日

(GeorgeRudy/iStock/Getty Images Plus)

エクセルに5分刻みでスケジュール管理
「量さえこなせば」と信じている

 その予定表を見た時、思わず目を疑ってしまいました。

「お父さん、これを全部やらせるつもりですか?」

「そうですよ。このくらいやらなければ、あと2年で開成には行けません!」

 マモルくんは、大手中学受験塾SAPIXに通う4年生。SAPIXは中学受験界では難関中学に強い塾として知られていますが、マモルくんは現在、最下位のクラスにいて、学力が伸び悩んでいます。しかし、お父さんはSAPIXに通っているのなら、最難関中学の開成を目指すのが当然と思っています。小学生の子どもは成長の発達段階にいるため、この先に伸びていく可能性は十分ありますが、偏差値40レベルの学力の子を、偏差値70レベルの開成に合格させるというのは、プロ家庭教師の私達でも、正直厳しいというのが本音です。しかし、お父さんは「死ぬ気で頑張ればできる」と思い込んでいるのです。

 そして、渡されたのが先の予定表です。予定表はエクセルに1週間単位で組まれており、1日のスケジュールも「計算ドリル15分」「休憩5分」「算数の復習55分」「休憩5分」といったように5分刻みにこと細かく書かれています。でも、それを小学生の子どもが予定通りきちんとできるわけがありません。計算問題1つ解くにも苦戦しているマモルくんには、予定の半分でお手上げ。そんなマモルくんを見て、お父さんは「お前の努力が足りないから伸びないのだ!」と叱ります。

 実は今、中学受験家庭で、マモルくんのお父さんのようなタイプの人が増えています。こういうお父さんの共通点は、仕事で成功している人が多いこと。自分が立てた業務目標に対し、自分も部下も頑張り、結果を出した。そうやって成果を出してきたから、自分のやり方に自信があるのです。しかし、そうできたのは、大人だから。大人であれば自制心もあるし、仕事となれば多少無理をしてでも頑張れます。でも、小学生の子どもに同じことを求めてもうまくはいきません。なぜなら、子どもにはまだその力が備わっていないからです。

 人生経験が浅い小学生の子どもは今がすべてで、遠い先の未来に向かって、毎日同じモチベーションで頑張ることなどできません。気分が乗っている時もあれば、やりたくない時もあるし、学力が伸びる時もあれば、下降をたどる時もある。そうやって日々変化している中で、親に決められた通りのスケジュールを実行することなどできないのです。目の前にいる子どもを見ずに、「○○をやれば○○になる」という単純な因果関係だけをたよりに、受験勉強を進めようとする“エクセル父さん”は、家庭内をかき回すだけ。仕事と小学生が挑戦する中学受験はまったく別物であることが分かっていないのです。


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