栖来ひかりが綴る「日本人に伝えたい台湾のリアル」

2019年4月19日

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栖来ひかり (すみき・ひかり)

台湾在住ライター

京都市立芸術大学美術学部卒。2006年より台湾在住。日本の各媒体に台湾事情を寄稿している。著書に『在台灣尋找Y字路/台湾、Y字路さがし』(2017年、玉山社)、『山口,西京都的古城之美』(2018年、幸福文化)、『台湾と山口をつなぐ旅』(2018年、西日本出版社)がある。 個人ブログ:『台北歳時記~taipei story』

『若葉のころ』(ジョウ・グーダイ監督)

 台湾は地理的に、日本・中国・アメリカという三つの大国に囲まれている。そして台湾に住んでいると、確かにその位置関係と同じく歴史・文化・経済・政治において、それぞれの影響を色濃く受けていると感じる。アメリカと東アジアのもつ煮込み、ごった煮みたいな感じといえばいいだろうか。さらに言えば、この地理関係こそがいまの台湾の複雑さを形づくってきた。

 台湾とアメリカの関係と言われても日本人にはピンと来ないかもしれないが、現在アメリカにおける台湾系アメリカ人は10~50万人と言われていて、2350万人の台湾の人口比率でいえばかなり多い。台湾政府も中国による統一戦線への対抗策として、アメリカとの関係強化に勤しんでおり、今年中に米政府高官の訪台もあり得ると囁かれているほどだ。

 台湾の生んだ世界的巨匠アン・リーの『推手』という作品でもアメリカに移民した台湾人一家の生活が描かれるが、台湾の現代社会を切り取れば、そこには自ずとアメリカ・日本・中国との関係や履歴の積み重なりが、ミルクレープの断面のように顔をのぞかせる。

 またそこには、元々台湾に住んでいた台湾原住民族や、日本時代以前より移住してきた客家人など、様々なエスニシティの要素も入り混じる。台湾社会を撮った映画というのは自ずと、そうした地図上の台湾という輪郭やサイズに収まらない、広く東アジアを俯瞰するような空間感覚・歴史感覚が織り込まれる。それは、若者たちの恋や思春期の悩みなどを題材にした、いわゆる「青春映画」というジャンルにおいても例外ではない。

『熱帯魚』(チェン・ユーシュン監督)

映画に投影された「台湾の自画像」

 さて4月20日から5月10日まで、新宿のK‘sシネマにおいて、「台湾巨匠傑作選2019 ~恋する台湾~」が始まる。

台湾巨匠傑作選2019 ~恋する台湾~
http://www.ks-cinema.com/movie/taiwan-kyosho2019/

「台湾巨匠傑作選2019 ~恋する台湾~」 写真を拡大

 今年で第四弾となるこの台湾映画に特化した特別上映プログラム、昨年2018年には劇場月間新記録を樹立したということで、台湾への関心の高まりと共に日本での台湾映画への注目度も増していることがわかるが、特に今年は台湾映画のもつ独特のきらめきがたっぷり味わえる「青春映画」選りすぐりのプログラムとなっている。

 侯孝賢(ホウ・シャオシェン)やエドワード・ヤンら台湾ニューシネマの名作はもちろん、陳玉勲(チェン・ユーシュン)監督による傑作『熱帯魚』や日本にもファンの多い『ラブ ゴーゴー』のデジタルリストア版も見逃せないが、筆者としてもうひとつお薦めしたいのが『台北発メトロシリーズ』と呼ばれる作品たちだ。

 台北メトロ駅の中から6か所を舞台に2016年に制作されたこのシリーズは全7作品あるが、その中から3作品がこのたび日本の劇場初公開となる。どの作品も文化と歴史のミルクレープな台湾の魅力を感じられる美味しい作品となっているが、その中のひとつ『まごころを両手に』(監督:リン・シャオチェン)は、日台の歴史について考えるうえでも興味深い作品だと思う。

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