WEDGE REPORT

2019年6月16日

»著者プロフィール
閉じる

中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 1日30分履くだけで、転倒防止や外反母趾の予防に役立つ、熊本県八代産のい草を使った足指運動ぞうりが高齢者にウケているという。2年前に発売したのは通販会社の誉(ほまれ、本社千葉市)で、このぞうりの製造の一部が八代市内の障がい者施設で行われて、障がい者に働く場も提供している。熊本県では、日本では八代市以外ではほとんど栽培されなくなったい草の消費拡大にもつながるとして支援している。

い草の刈り取り風景(熊本県八代市)=園田聖さん提供

「現代版わらじ」

 近年、日本人の多くは立った時に5本の指が地面についていない浮指や土踏まずのないのが多いことが最近の研究で注目をされている。こうした足型の乱れは、足指の運動が姿勢にも影響しているとして「現代版わらじ」のぞうりを作った。

い草を使ったぞうり

 これを「高齢者がつまずくことを予防する研究」を進めていた熊本大学(西阪和子 熊本大学名誉教授)が注目し、水俣市の100人以上の高齢者に履いてもらう共同研究の結果、足の指の力を付けるけることの重要性が確認された。さらに調べた結果、ひざの関節の可動域が伸びて歩幅が拡大するなどして転倒防止になることが分かった。これを生かす形で、履いて歩くだけで「にぎる・ひらく」の足指運動が効果的にできる「足指運動ぞうり」が完成して、現在の形状になった。

「最後の砦」

 初めはぞうりの足の裏側が付く部分には紙製の畳表を敷いていたが、熊本県が絶滅しかけていたい草の栽培を残そうとしていたことから、誉ではぞうりの指が付く部分に八代産の本い草を織った畳表を敷くことにした。

 い草は1970年代までは岡山、広島、熊本などで畳表の原料として盛んに栽培されていたが、その後は安く生産できる中国産のい草に押されて、いまでは日本で八代市などでわずかに栽培されているだけ。国産い草を守ろうとしている熊本県の小野泰輔副知事は「ここ(八代)が国産い草の最後の砦」として、同県はい草産地に補助金を出し、誉に対してい草農家を紹介するなど支援している。

 い草を栽培しているJA八代の谷川隆生・い業センター長は「平成の初めには八代で6000~8000人がい草を栽培していたが、いまは400人しかいない。い草の需要が減る中で、新しい製品にい草が使われることで、少しでも日本古来のものに親しんでもらいたい」と話している。

 畳とカビについて研究している北九州市立大学の森田洋教授によれば、い草を使う効用について「い草が水虫の原因となる白癬菌に対して抗真菌効果があるという点と、足の臭いの原因となる細菌類にも効果がある」と指摘する。

 またぞうりの製造では、八代市にある障がい者施設「とら太の会」の障がい者が、張り合わせ、検品などの工程で働いており、障がい者の雇用の場を提供している。

関連記事

新着記事

»もっと見る