Wedge REPORT

2019年7月19日

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ゴン川野 (ごん・かわの)

フリーランスライター

小学生より写真とオーディオをはじめ、高校では写真部部長として暗躍。コピーライターを経て雑誌ライターに転職。バブル期にオーディオ誌で荒稼ぎしてハイエンド機器を揃える。現在はアップル株値上がりで撮影スタジオ兼リスニングルームの新築を画策中。阿佐谷在住。合資会社GON代表。

 NTTを1年で退社後、Microsoft社でWindows95を完成させたソフトウエアエンジニアの中島聡氏。2019年5月にアメリカで、自らが創立した会社「Xevo」を3億2000万ドル(約352億円)で売却すると同時に取締役会長を退いた。再び自由を手にして彼が、次に起こすアクションは何か。米国、日本、中国のITの行方を中島聡がエンジニアの視点から語る。

中島聡氏(写真、小平尚典)

日本企業がダメになった理由

Q 日本企業のつまずきの原因はどこにあったのか?

中島 日本企業はなぜダメになったのか。それはITの導入の遅れです。例えば書店を例に考えてみましょう。リアルな店舗に対して、Amazonがネットに書店を作りました。ネット書店は実際に本にさわれないなどマイナス面もありますが、品揃えが充実していて、安価で、すぐに配送してくれるなどのプラス面も沢山あります。

 書店に本を買いに行くよりも、Amazonに注文した方が早く届くという逆転現象が起こって、書店はIT企業に仕事を奪われてしまいました。それと同じようにDVDで販売されていた映像コンテンツは、NetflixやAmazonのストリーミング配信に取って代わられようとしています。音楽コンテンツもサブスクプションのストリーミング配信にも起こっています。

 これらのことは、自動車でも、銀行でも、医療でも、全ての業種におこることだと思っています。医療は専門家の医師がいますが、彼らの仕事の多くが、これから10年、20年かけてIT化されていくことは間違いありません。それに乗り遅れた会社は生き残れません。つまり、どんな企業もIT化が必要なのです。

 日本ではUberの導入が遅れていますが、これも自動運転が実現すればガラッと替わってくるでしょう。アメリカの場合はUberが来てから自動運転という2つのフェーズに分かれていますが、日本の場合は一気に自動運転タクシーの時代が来て、既存のタクシー会社は、このままではそれに対抗できないと思います。

 自動運転の実現には、政治的な解決、技術的な解決、そして誰がそれを安く提供できるのかが問題になってきます。提供するのは既存のタクシー会社になるかもしれないし、UberかGoogleかもしれない。当然、NTTドコモ、SoftBankなどの通信会社も狙っていると思います。

ITで変わる銀行、変わらない銀行

Q 何かと話題のAIの重要度はどれぐらいなのか?

中島 これまでも、様々なAIが使われて来ましたが、自動運転となるとAIがとても重要な役割を果たします。これまで人間にしかできなかった様々な仕事を、AIがより効率的に行う時代が来つつあるのです。最初は銀行などの金融系です。日本の銀行を見ても分かるように、ものすごく無駄が多いんです。店舗の数といい働いている人の数といい作業効率が悪すぎます。またATMがあっても24時間稼働しないで夜は停止するとか。

 米国ではFinTechと呼ばれる金融ベンチャーが伸びています。FinTechはFinancialとTechnologyからの造語ですが、金融サービスに新たな動きをおこしています。米国はこのような新たな動きに対する対応が早く、法律もどんどん変わっています。スマートフォンやタブレットを使ったモバイルPOS(Point Of Sales)も一気に普及しています。AIを利用した資産運用のロボ・アドバイザーなんかもそうです。

 日本の場合は規制が厳しくて、なかなかベンチャーが頑張れないという実情があります。そうすると既存の体質のメガバンクがいつまでも頑張ることになります。これで進化が遅れますが、政府の延命措置でしかないので、結局はどこかでパツンと変革がおこります。今でも地方銀行はかなり厳しい状態だと思います。

 ネット銀行は個人の返済能力がどのぐらいあるか把握できます。中国のAlibabaがやっているのは金の流れを把握することで、人やビジネスの信用スコアを精密に算出しています。信用スコアから、この企業なら貸付利子は5%、こっちは7%とか決めています。これが出来るのは中国の一党独裁政治とプライバシーを重視しない考え方のおかげで、アメリカはこうした中国をアンフェアだと考えています。

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