Wedge REPORT

2019年8月16日

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 経営には「アート(直感)」の部分と「サイエンス」の部分がある。私はこの「アート」の部分を「こだわり」と呼んでいる。例えば宿泊客に「こんな滞在をしてほしい」「こんな体験をしてほしい」といったものが「こだわり」だ。経営者はこうした「こだわり」に投資することで、市場調査をしても出てこない、新たな価値を生み出すことができる。

星野佳路(Yoshiharu Hoshino)  星野リゾート代表
1960年、長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、米コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。1991年に星野温泉(現在の星野リゾート)社長に就任。(写真・井上智幸)

 例えば、大阪・新今宮にも開業予定の観光ホテルOMO(オモ)は、「都市こそが観光客が訪れるリゾートであり、彼らをターゲットにしたホテルが必要」という、私自身の「こだわり」を出発点にしている。

 一方、こうした経営者の「こだわり」への投資にはもちろんリスクを伴う。そこで、その「こだわり」を実践する上で、リスクを減らすため、そして「こだわり」への自信や根拠を得るために、経営学の教科書を読みこみ、サイエンスを駆使して経営を行っている。

 ただし、決してサイエンスを経営の出発点にしてはいけない。教科書に書いてあることは誰もが読むことができ、すぐに同業者に真似され、追い付かれるからだ。

 日本のホテル業界には、1990年代から続々と欧米系ホテルチェーンが進出してきた。それに伴い、トップダウンでスタンダリゼーション(標準化)した画一的なサービスを提供する欧米系ホテルチェーンの経営手法が、日本のホテル業界でも取り入れられた。これによって、サービスレベルの底上げが図られたが、均質化してしまった。さらに、ITが進展したことで宿泊予約サイトが普及し、宿泊客へのリーチの質についても、差はなくなった。

 こうした状況下で自らの宿泊サービスを顧客に選んでもらうためには、他の旅館・ホテルとは一線を画す個性的なサービスを提供するほかない。そのため、グループ内で人気があるサービスが生まれても、それを安易に水平展開することはしない。

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