立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2019年8月17日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

国籍選択、半数近くの香港人がイギリス人になった場合

 前出のトム・タジェンダット議員は、「英国は『中英連合声明』に定められた義務を負っている。1997年返還当時にやるべきだったが、やらなかったことで、この間違いを是正しなければならない。それはつまり、香港人(ホンコン・チャイニーズ)に完全なる英国市民権を付与することだ」と、政治的決断を呼びかけている。

 BNO旅券保有者の香港人が英国籍の取得にあたって、中国籍の放棄手続を行わなければならない。祖国に返還された香港で、数百万人規模の香港人が祖国の国籍を捨て、旧宗主国であるイギリスから与えられる英国籍を進んで取得する。香港市民の国籍選択、このトップニュースが世界中に発信されたとき、世界トップクラスの大国を志す中国にとっての敗北感は屈辱的であろうし、到底耐えられるものではないだろう。

 では、イギリス人となった数百万人の香港人は香港から退去しなければならないのかというと、まったくその必要はない。彼たち全員が香港永久居民(永住権保有者)でもあるからだ。

 仮に、香港デモの参加者の3人に1人がイギリス人である場合、軍や武装警察の投入どころか、催涙ガスやゴム弾も今のように使えなくなるかもしれない。同じような顔をした市民を香港人とイギリス人に区分することはそう容易ではない。イギリス人のデモ参加者に死傷者でも出た場合、英国総領事館が直ちに介入してくる。国際問題になるのがオチだ。さらに、自国民保護のため在香港英国総領事館の規模が現在の数倍や数十倍にも膨れ上がれば、香港政府と対峙する「第2の政府」、あるいは野党的な存在になり得るだろう。

 トム・タジェンダット議員の香港人への英国籍付与案は、実施可能な仮説として、対中交渉における大きなカードになるだろう。

  
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