立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2019年9月6日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 
「逃亡犯条例」改正案の撤回を表明する林鄭月娥行政長官(AP/AFLO)

 香港の林鄭月娥行政長官がついに「逃亡犯条例」改正案を正式に撤回した。9月4日夕方の発表を受け、台湾訪問中で台北市で開かれた記者会見に臨んだ香港の民主活動家、黄之鋒氏らは神妙な面持ちで「遅過ぎた決定」と批判し、「継続抗争」の意思を表明した。さらに同じ活動家メンバーの周庭氏も「条例の撤回は喜べない。遅すぎた」とツイートした。

行政長官のよく練られた「回答」

 数カ月にわたった今回のデモは「反送中」と名付けられていた。「逃亡犯条例改正案を反対し、その撤回を求める」というのが主たる目的だった。5大訴求のなかでも、メインテーマとされる目的が達成されたわけだから、少なくとも「一部勝利」といってもよさそうだが、「喜べない」とは何事か。まさか「悲しむ」べき出来事とでもいいたいのか。なぜだろう。

 まず政府側の法案撤回発表の一番大きな効果はなんといっても、デモのテーマが消えたことだ。「反送中」という名称はもう使えなくなる。「継続抗争」といっても、残りの4つの要求からエッセンスを絞り込み、リブランディング(ブランドの再構築)作業が必要になってくる。

 残りの4つの訴求と行政長官の回答を逐一要約しよう。

 まず、デモに対する警察の暴力行為(権力濫用)について、独立調査委員会の設立に応じないものの、警察の公務執行に対する監督監査の手続規定に従って、独立監警会という専門担当機関に委ね、精査を行う。監警会はすでに国際専門家チームを立ち上げ、精査に関する情報を公開するというものである。

 次に、デモ活動に対する「暴動」の定義(規定)について、法的には「暴動」という定義が存在しないため、撤回云々もない。

 さらに、逮捕されたデモ参加者の全員釈放・不起訴処分については、法治社会では受け入れられないものである。

 最後に、香港における行政長官と立法会のダブル普通選挙の実施については、法理的基礎に基づき、実務的検討に持ち込む。

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