消費増税より相続税と固定資産税を増税すべきだ、と久留米大学商学部教授の塚崎公義は説きます。
消費税の増税は問題が多い
所得税等が高額所得者に高い税率を課す「累進課税」であるのに対し、消費税は誰に対しても同じ税率なので、貧しい人に重税感があると言われています。「逆進的だ」と言う人さえもいます。
また、財務省の考える消費税の長所は、高齢者も負担することと、税収が景気の波に左右されにくいこと、だそうですが、これはいずれも疑問です。
消費増税によって消費者物価指数が上がると、高齢者に支払われる年金が増額になるので、高齢者にとって消費増税はそれほど負担増になりません。
また、所得税等が景気によって税収が大きく変化して景気の変動を抑制してくれるのに対し、消費税にはそうした効果が見込まれません。
しかも今回、軽減税率が導入されたことによって現場の事務が複雑化し、ますます消費税のデメリットが意識されるようになりました。
それなら、消費税を元に戻し、あるいは長期的には減税していくことが望ましいでしょう。その場合、当然求められる代替財源としては、相続税と固定資産税の増税が望ましいと考えます。
相続税は公平で痛税感と景気への影響が小さい
所得税は、一生懸命働いて所得を得た人が払うものですが、相続税は運の良い人が払うものです。金持ちの家に生まれた子もそうですが、金持ちの兄弟姉妹が相続する場合のように「棚から牡丹餅」的な人も少なくないでしょう。
そうであれば、所得税に課税するよりも相続税に課税する方が公平だ、と筆者は考えます。
ちなみに、夫婦が共同で形成してきた財産に課税するのは問題でしょうから、本稿では配偶者の相続分については増税を主張しないことにします。
消費税と相続税を比較した場合には、後者が累進課税であることから、後者が公平であろうと考えます。
公平の観点以上に筆者が重視する理由の一つは、痛税感です。所得税は「せっかく働いて給料をもらったのに、所得税のせいで意外と少ない」と感じさせるでしょうし、「給料から一定額を貯金して残りを使おう」というサラリーマンにとっては消費の抑制要因となるでしょう。
消費税は、消費するたびに消費税額を思い知らされるわけですから、痛税感も大きいですし、消費の抑制効果も大きいでしょう。駆け込み需要とその反動減によって景気に不必要な変動を生じさせる所も消費税の難点でしょう。
一方で、相続税は「相続できただけでラッキーだ。多少の税金は差し引かれているが、それは仕方ないだろう」と割り切ることができるはずです。
痛税感以上に重要なのは、景気への影響が小さいことです。相続した財産を直ちに全額使おうと考えている人は少ないでしょう。老後のためにとっておく人も多いでしょうし、少なくとも「10年くらいかけて、少しずつ使おう」と考える人が多いはずです。
そうだとすると、相続税が増税されても、景気への影響は限定的だということになります。