イスラム市場開拓のカギ
食品認証「ハラル」取得に動くメーカー


Wedge編集部

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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日本人の舌は肥えているといわれるが、経済成長著しいイスラム国マレーシアやインドネシアでも、より美味しいものを食べたいという人々のニーズをとらえるため、日本の食品原料メーカーが動きだしている。

 食品香料大手の長谷川香料は、昨年8月に上海と蘇州にある中国の2工場で、イスラム法にのっとって食品を製造していることを示す「ハラル」認証を取得し、マレーシアやインドネシア向けに飲料や菓子に使用される香料を生産している。

 ハラルとは、イスラム教で「許されたもの」を意味する。認証を取得するには、イスラム教で不浄なものとされる豚やアルコールが製品に含まれないようにするだけでなく、保管や輸送を分けなければならない。

 同社は、2002年に日本工場でも認証を取得しており、早くからイスラム教徒の多い東南アジアをマーケットとして重視してきた。ハラル専用の製造ラインを設けたり、倉庫を区分けしたりと認証取得には手間がかかるが、維持するのも一苦労だ。2年に1度行われる認証機関の監査では、原料がハラルであることを証明しなければならない。日本には認証を取得した原料が少なく、原料の供給元に配合や製造工程などの詳細情報をわざわざ英文で提供するよう求めている。ここまでする理由について同社は、「イスラム圏で香料の販売を拡大していくにはハラル認証は必要不可欠」と話す。

 日本国内のハラル認証機関である拓殖大学イスラーム研究所には最近、食品原料メーカーからの申請が増加している。同研究所の遠藤利夫氏は、「経済が成長し、購買力をつけたマレーシアやインドネシアの食品原材料の輸入業者が、ハラル認証の取得を日本のメーカーに要求するようになってきた」と理由を説明する。

食感までこだわるインドネシアの消費者

 豊かになったマレーシアやインドネシアの消費者の「食」に対する欲求は、風味だけにとどまらない。食品添加物「アルギン酸」の生産量世界第2位のキミカは、「ハラル認証のあるアルギン酸を扱いたい」というインドネシアなどの現地取引業者の声を受け、昨年11月にイスラーム研究所から千葉県内の工場でハラル認証を取得した。

 アルギン酸は、食品の見た目や食感をよくするために利用される。あまり聞きなれない成分だが、実は多くの食品に添加されている。例えば、麺にコシを出し歯ごたえをよくしたり、パンをふっくら仕上げたりする。まさに食に対する日本人のこだわりを陰で支えている。

 同社の宮島千尋取締役は、ハラル認証の取得について「イスラム市場に入る免許がとれただけ。今後は売り上げの半分を占める北米と同程度にアルギン酸を東南アジアや中東で売っていきたい」とハラル食品市場の拡大に期待を寄せる。

 世界のハラルハブ(拠点)をめざすマレーシア政府によると、世界のハラル食品市場の規模は年間6800億ドル(約55兆円)。現在16億人のイスラム教徒は、30年には22億人に増加し、今後もハラル食品に対する需要の拡大が見込まれる。マレーシア工業開発庁東京事務所のモハマッド・ハシム所長は、「所得水準が向上したイスラム教徒の消費者は、より質の高い生活、とりわけ安全でおいしい食品を求めている。高品質な日本の中間材料や原料に対するニーズは強い」と語る。

 新興国ビジネスに弱いと言われがちな日本企業だが、味にうるさい国内の消費者に鍛えられた日本の食品メーカーには、ハラル認証を足がかりに、巨大なイスラム市場を開拓できる余地がまだ残っている。

◆WEDGE2012年4月号より


 




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