2050年の世界はどうなる?
日本人に必要な「虫の眼・鳥の眼」

『2050年の世界地図 迫りくるニュー・ノースの時代』


東嶋和子 (とうじま・わこ)  科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師

元読売新聞科学部記者。フリーランスで環境・エネルギー、医療、生命科学、科学技術分野を中心に、科学と社会のかかわりを取材。主著に『名医が答える「55歳からの健康力」』(文藝春秋)、『人体再生に挑む』(講談社)などがある。

オトナの教養 週末の一冊

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東日本大震災以降、わが国のエネルギーや社会保障をどう選択し、設計していくかという議論がかまびすしい。野田佳彦首相が語るように、待ったなしの課題であり、かつ、しっかりと腰を据えた議論が必要なのはいうまでもないが、どうも、「虫の眼」の視点しか伝わってこない。

『2050年の世界地図 迫りくるニュー・ノースの時代』(ローレンス・C・スミス、NHK出版)
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 「虫の眼」というのは、蟻が地面を這うように、現象をクローズアップしてより詳細に、より深くとらえる視点。一方で、「鳥の眼」とは、空を舞う鳥が現象から一歩引き、より広い視野から俯瞰する視点。私自身、ジャーナリストとしてこの2つの視点を同時に持つことを心がけているし、ほかのあらゆる分野でも必要な態度であると思っている。

 数十年後の未来を決定づける重要な議論をするにあたって、「虫の眼」はともかく、「鳥の眼」をどれだけの人が駆使しているだろうか。このままでは「群盲象を撫でる」のような過ちを犯すのでは、と不安を募らせているのは私だけではないはずである。

 たとえば、福島第一原子力発電所の事故後、日本のマスメディアでは地球規模の気候変動についてほとんど語られなくなった。まるで目の前からなくなったかのようである。

 いわずもがなだが、気候変動は“いまそこにある危機”のひとつだ。人為的にせよ、過去にも地球が経験したような自然の変動であるにせよ、気候変動が2050年の地球に必ず“何らかの”影響を及ぼすことは間違いない。

週末に「2050年の世界に関する思考実験」を

 2050年に世界はどうなっているのか。週末に、「2050年の世界に関する思考実験」をしてみるのも、鳥の気分を味わえて楽しいかもしれない。

<これは私たちの未来についての本だ。気候変動はその一要素にすぎない。人口、経済統合、国際法などの面で、ほかの大きな潮流も探る。地理と歴史も調査し、既存の状況が将来まで痕跡を残す様子を示す。最先端のコンピュータモデルに目を向けて、将来の国内総生産(GDP)、温室効果ガス、天然資源の供給を予測する。これらの潮流を総合的に探り、合致する部分や類似点を突き止めれば、このままの状況が続いたら、今後40年間でこの世界がどんなふうになるのか、それなりの科学的信憑性をもって想像できるようになる。これは2050年の世界に関する思考実験だ>(第1章19ページ)

 米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の地理学教授である著者が高らかにこう宣言するように、本書は過去、現在のデータとコンピュータシミュレーションを駆使した分析に重きをおいている。

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著者

東嶋和子(とうじま・わこ)

科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師

元読売新聞科学部記者。フリーランスで環境・エネルギー、医療、生命科学、科学技術分野を中心に、科学と社会のかかわりを取材。主著に『名医が答える「55歳からの健康力」』(文藝春秋)、『人体再生に挑む』(講談社)などがある。

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