2024年5月11日(土)

韓国の「読み方」

2020年4月7日

大統領支持率は微減のち急上昇

 年末年始や旧正月などを除いて毎週金曜日に発表される韓国ギャラップ社の世論調査を見ると、昨年11月から今年1月にかけての大統領支持率は45〜49%だった。昨年9〜10月には側近の曺国(チョ・グク)前法相を巡るスキャンダルで40%前後にまで落ち込んでいたから、緩やかな回復基調にあったといえる。

 そして2月以降の支持率は、新型コロナ情勢に合わせて変動した。2月21日発表(調査期間は18〜20日)が45%。新天地での集団感染拡大が深刻な問題となっていた28日発表(同25〜27日)で42%へと減少したものの、新規感染者数が落ち着いてきた3月13日発表(同10〜12日)では49%に回復。直近の4月3日発表では56%にまで伸びた。

 同社の調査は支持、不支持の理由を聞いている(複数回答)。「新型コロナウイルスへの対応」を理由に挙げた比率を見ると、支持率への影響は明白だ。支持率が落ちた2月28日発表の調査では、「コロナ対応」を支持理由に挙げた人が30%、「対応不足だ」と不支持の理由にした人が41%だった。特に不支持理由として挙げた人は前の週に7%しかいなかったので、ここに不満が集中したことが読み取れる。

 一方、支持率が上向いた3月13日発表の調査では、「コロナ対応」を支持理由とした人が前週比7ポイント増の44%、不支持理由とした人は前週比13ポイント減の37%。直近の4月3日発表分では、支持理由とした人が58%、不支持理由とした人が33%だった。

 そもそも任期3年目の終盤に5割の支持率というのは、民主化以降の歴代大統領の中では最高水準である。朴槿恵、文在寅と排他的性格の強い政権が続いたことで社会の分裂が深刻化しているため、「何があっても支持」「何があっても不支持」という人たちが相当程度いることを考えると、この変動は数字以上に大きいように思われる。

選挙法改正では与党の目論見が不発に

 韓国国会の任期は解散なしの4年で、小選挙区253と比例区47の計300議席。日本と同じように小選挙区では候補者、比例区では政党にそれぞれ投票する。小選挙区と比例区の重複立候補は認められておらず、比例名簿はあらかじめ順位が決まっている。比例名簿は1位を女性、2位を男性というように奇数順位を女性に割り振るのが一般的だ。

 ただ昨年末の選挙法改正によって、比例区の議席配分は小政党が有利な方式に変わった。小選挙区で獲得した議席が少ない政党に比例区議席を手厚く配分するというものだ。小選挙区は与党「共に民主党」と保守系野党「自由韓国党(現・未来統合党)」の対決が多いから、2大政党には不利になる。

 与党側がこれを推進した際の言い分は「小選挙区で死票となる有権者の意思をすくいあげる」というものだったが、実際には制度改正によって得をするのは与党に近い進歩派の小政党だという計算があった。自分たちも損をするけれど、どちらかと言えば保守系の受ける打撃の方が大きいと考えたのだ。だから自由韓国党は猛反発したが、与党側は小政党を抱き込み強行採決で成立させた。

 だが、保守派も黙ってはいない。朴槿恵弾劾の余波で分裂状態にあった保守系は今年2月、自由韓国党を軸に再結集して未来統合党を結成。与党側がゴリ押しした選挙制度改正の裏をかいて、比例区用の衛星政党「未来韓国党」を立ち上げた。未来韓国党は小選挙区に候補を立てないから、比例区では小選挙区議席ゼロの小政党として優遇される。本来は大政党なのだから、優遇されたら比例区での議席は大きく伸びる。結果的に、与党が大損をするだけという状況が生まれた。

 共に民主党は「制度改正の趣旨を無にするものだ」と非難したが、そもそも強行採決だったのだから分が悪い。それでも自党だけが大損する状況を放置することもできないとして持ち出したのが、「市民団体の政界進出を後押しする」という名分での衛星政党「共に市民党」立ち上げだった。比例名簿上位を市民団体の推薦で埋めることにして、なんとか名目を保つ形を作った。


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