世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年5月30日

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 米ヘリテージ財団のウェブサイト5月8日付で、同財団のDean Chengが、薄煕来事件以後、中国の内政は混乱しており、改革の方向も見失っている、米国は対中政策について一息つけることになったが、今後、亡命希望者の扱いなどは難しくなるかもしれない、と言っています。

 すなわち、薄煕来事件以来、腐敗対策にしろ、地方重視にしろ、当局がそれは民衆の意思だと言っても、本当に民衆のためを思っての改革なのか権力闘争の手段なのか、わからない状態になってしまった。今後は、改革を行なえば、利権が一部に偏り、権力者間に力の不均衡が生じる恐れや、民主的改革がポピュリスト運動に利用される恐れが生じてきている。そのため、中国の自由化や改革は10年以上遅れることになるだろう。

 また、今後、中国指導部の中でコンセンサスの形成が難しくなり、ハト派路線とタカ派路線が内部で調整されず同時に出てくる可能性がある。特にハト派は、タカ派をなだめるための代償として米国に譲歩を要求するようなことがあるかもしれない。

 他方、こうした不安定な状況にあって中国は新しい動きはとれないため、米国は一息つけるかもしれない。その間、米国はインドやフィリピンなどとの協力を進展させることができるだろう。ただ、中国内政が混乱する中で、亡命者対策を考えねばならなくなるかもしれない。

 いずれにしても、米国は今後米中関係が不透明となることを覚悟しなければならないだろう、と言っています。

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 薄煕来事件以後、ここまで先の見通しを読んだ論説は初めてのように思われます。また、それを米国の今後の戦略につなげて、中国周辺諸国と米国との関係を強化するチャンスだと大戦略論を論じているところが注目されます。

 薄煕来事件が今秋の権力継承に与える影響については、とかくの議論がありますが、中国指導部は何とか取り繕って、党内を抑えてしまうように思われます。むしろ、指導部にとってより大きな打撃となったのは、共産党幹部の腐敗堕落が公然とウェブで喧伝され、それによって国民の中国共産党に対するイメージが大きなダメージを被ったことでしょう。このことは、今後の中国国内デモの取り扱いに影響して来ると思われます。

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