世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年5月31日

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 ニューヨーク・タイムズ5月8日付で、Nicholas Kulish同紙記者らが、ギリシャのユーロ圏離脱の可能性が高まっている、今やドイツ人の圧倒的多数が、ギリシャがユーロ圏を離脱した方がよいと考えており、ドイツ政府のギリシャ救済熱は冷めてきている、と解説しています。

 すなわち、少し前までギリシャのユーロ圏離脱は「考えられないこと」だったが、ギリシャの総選挙後、離脱の可能性が高まってきたようだ。

 ドイツはユーロとEUに深くコミットしているものの、ギリシャに対しては苛立っているのは明らかだ。あるドイツのユーロ専門家は、今やドイツ人の圧倒的多数が、ギリシャがユーロ圏を離脱した方がドイツにとって良いと考えている、と言っている。

 欧州はこれまでも多くのユーロ危機を乗り越えてきたが、今回、選択肢はあまりない。一つの可能性は、債権者のトロイカ――EU、欧州中央銀行とIMF――がギリシャ政府の機能を最小限支え、その間、新しいギリシャ政府と救済条件を再交渉し、ギリシャ政府がそれを受諾することだが、トロイカがこれ以上の救済を拒否する可能性もある。IMFは10年前、アルゼンチン政府が救済条件を守らなかった時、アルゼンチンへの資金提供を一切拒否したことがある。

 ギリシャの殆どの債務はトロイカが持っており、民間銀行の負担は少ない。またイタリアやスペインなどへの圧力緩和のための救済基金も整備されている。

そして、ドイツ政府関係者のギリシャ救済熱は冷めつつあり、最近ショイブレ蔵相は、公の場で、EU加盟は強制的ではなく、自主的なものであり、ギリシャは選択することができる、と発言している。

 これはドイツの政策決定者のムードの変化を反映するものだ。多くの専門家の見方では、今、欧州は、「ギリシャが自己通貨のほうが良いと決めた場合に備えて、静かに準備を進めている」、と言っています。

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 ユーロ問題では圧倒的にドイツの意向が重要です。実際、1970年代に欧州が金融協力を始めて以来、殆ど全ての協定は主としてドイツが設定した条件で交渉されたと言われています。そのドイツで、ギリシャのユーロ離脱がむしろドイツにとって望ましいとの見方が広まっていることは、離脱の可能性が高いことを示しています。特にショイブレ蔵相が、ギリシャがユーロ圏にとどまるかどうかはギリシャが決めることだ、の趣旨の発言をしていることは、ドイツ政府自身が、ギリシャのユーロ離脱はやむを得ないと見ていることを示唆するものであり、ギリシャ危機は新しい段階を迎えたといってよいでしょう。

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