世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年6月4日

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 ネタニヤフ首相がカディマ党との大連立政権を成立させたことを受けて、ワシントン・ポスト5月13日付社説が、これで挙国政権が出現し、中東和平交渉の活性化が期待できる、と言っています。

 すなわち、ネタニヤフによる大新連立政権ができたことで、タカ派はイラン攻撃の態勢ができたと期待し、ハト派はパレスチナとの和平交渉を再開できるのではないかと期待している。もっとも、こうしたことはネタニヤフにとっては二次的なもので、ネタニヤフの目的はこれによって任期を18ヶ月延長することにあった。また、連立相手のカディマ党も秋の選挙で大敗を喫するのを回避できた。つまり、大新連立政権の成立は、国内政治が優先された結果だ。

 とは言え、安定した中道イスラエル政府なら、イランやパレスチナ問題で行動を起こし易くなるだろう。ただ、これらの問題にイスラエルがどう対処するかは、国内事情よりも国外事情によるところが大きい。

 先ず、イランについては、欧米とイランとの交渉がどうなるかがカギで、交渉が上手く行き、ウランの高濃縮と地下施設の建設停止が合意されれば、ネタニヤフはイラン攻撃を正当化できなくなる。他方、交渉が決裂すれば、イスラエルには戦争を遂行するのに適した挙国内閣が存在することになる。

 また、パレスチナ和平推進は、連立政権の主要事項の一つに挙げられているものの、この面で動きがあるかどうかは、やはりパレスチナ側の出方による。これまでアッバスは、ネタニヤフがいずれ失脚すると見てネタニヤフとの接触を避けてきたが、今や、連立を相手にするかどうか検討せざるを得なくなった。他方、大連立政権を率いることになったネタニヤフは、重要取引を行える立場にある。オバマ政権はネタニヤフを試すよう、アッバスに圧力をかけるべきだ、と言っています。

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 ネタニヤフは、正統派ユダヤ人の徴兵実施など政治的諸問題を抱えていたため、それらを打破すべく、9月に総選挙を行う方針を打ち出していましたが、5月8日になって突如、議会の最大野党カディマのモファーズ党首と大連立に合意し、選挙は取りやめられました。

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